口が徐々に、本当に日々徐々に開くようになってきたものの、まだ固形物はキツい。
食事も完全なミキサーから、徐々に少し固形のものも混じるようになってきた。
それらをひとつずつクリアし、時には完敗し、俺は少しずつ経験と自信を積み重ねていた。
しかし。
毎朝、あいつに苦しめられるのな。
毎朝挑戦しているのに、一度たりとも勝てたためしが無いのな。
食事も完全なミキサーから、徐々に少し固形のものも混じるようになってきた。
それらをひとつずつクリアし、時には完敗し、俺は少しずつ経験と自信を積み重ねていた。
しかし。
毎朝、あいつに苦しめられるのな。
毎朝挑戦しているのに、一度たりとも勝てたためしが無いのな。
果肉入りのオレンジジュースに入った、さくらんぼ。
大塚愛は可愛いと思うよ。
声も演技も悪くないと思う。
しかし、これはいただけない。
まぁ大塚愛は全然関係ないんですけど、とにかくさくらんぼがむちゃくちゃかてーのな。
必死こいてカミカミしてやっても、俺の力ではせいぜい奴をへこます程度。
こっ、この俺が!
餃子の王将で3000円食った伝説を作ったこの俺が!さくらんぼごときに!
そーいやさくらんぼのヘタが口の中で結べると、キスが上手いとかゆーたよね。昭和の時代に。
厨房の頃、すんげー練習したよ。そして出来るようになったよ。
合コンで披露したらザザーって音がするぐらいドン引きされたよ。
俺がモテないのはこの技能のせい、あと空気読まないせいだと思う。0.002%ぐらいは。
口が開いて1週間が経過。
それでも少しずつ、噛む力は戻ってきていたし、口も指二本分ぐらいは開くようになってきた。
もちろんリハビリは欠かしてない。
そしてついにっ!!
やったよ俺!ついにさくらんぼに勝ったよ!
誰の力も借りず、やっと1人で!
この感動を誰かに伝えたくて伝えたくて、フンガフンガしてたら、ちょうど天使が検温に来た。
見て見て見てほらほらほら俺やったよさくらんぼに勝ったんだよすごい?ねぇ凄いよね?
って、感動を包み隠さず詰め寄った。
様々な患者がいたであろう。
決して楽な患者ばかりではないはずだ。
困った患者もたくさん見てきたし、対応してきたろう。
プロとして、幾多の修羅場を乗り越えてきたのであろう。
そんなプロですら困ってた。苦笑い。コマッタナーって顔に浮き出てた。
「あ、ああすす凄いですねーぇ」
とか上ずった声で、少し後ずさりながら言われた。手がなんか武器になるもの探してたくさい動きしてた。
俺ってなんなの?バカなの?死ぬの?
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