俺のおみや

「．．．一体、何があったんですか？」

我々は、ついに伝説の男、まれにみるアホ、たから氏を見つけ出すことに成功した。
彼は、人里離れた山奥に、１人でひっそりと暮らしていた。
そこは今にも崩れ落ちそうな小屋で、家具といえるようなものもない。
この殺風景な部屋で、１日のほとんどを、寝て過ごしているという。
そのアホさで幾度も列島を揺るがした、かつての面影は微塵も無い。

彼は、その質問にすぐには答えず、ゆっくりと身を起こした。
もうほおって置いてくれ、という言葉が、語らずとも背中から感じ取れる。
しかし我々とて、ここまで来てただ帰るわけには行かない。
じっくりと、慎重に言葉を選びながら、彼の「あの日」を聞き出そうとする我々取材班。
そして長い時間をかけ、とうとう彼の口からそれを聞き出すことに成功した。

「お話せねばなりますまい．．あの日のことを．．」


まぁ行ってきましたわ、お見合いパーティ。
さっきやっと１人反省会が終わったところです。

まず会場。
ちっこい場所でやるもんだと思っていたら、普通に駅前のビルですよ。
そこの会議室を使うみたいです。

時間の１５分前に来いと言われていたので、そのぐらいに到着。
着いたら、もうすでに何人か来ていて、受付してるんですわ。
受付は男と女に分かれていて、女性スタッフがそれぞれ１人ずつ対応してました。
お金を払って、番号の書いた札とカードをもらって、後は中に行けば説明するからと言われます。

コートをそこのハンガーにかけて、部屋の中に入ります。
椅子がずらーっと横に、向かい合わせに２列並んでました。
椅子は隙間なく並べられていて、入り込むのに一苦労。
来た順番で番号がふられてるみたいです。

まず、プロフィールカードというのを書きます。
膝の上で書くので、ただでさえ汚い字が、ますますひどいことに。
これは名前、住所や趣味など、自己紹介のための項目を書くもので、せっせと埋めていきます。
女性と会話するときに、これをお互いに交換して、それから話を進めるという形になるそーです。
だから、質問しやすいように書いたほうが良いかと思い、例えば趣味にバイオリンとは書かず、楽器とか広い意味で書いてました。
休日の過ごし方とか、性格、最近見た映画などを書く欄がありました。
あとは年収とか学歴なんかもあり。
たばこやお酒の欄もあり。
カップルになったら最初に行きたい場所は？という質問以外は、なんとか埋めた。
かなり考えたけど、あんまそういうの．．無いかも。
はて？そもそも俺なんでここにいるんだろう？

これを書いてる間にも、どやどや人はやってきて、当然前の列には女性も並びます。
あんまジロジロ見ると失礼かと思いながらも、見える範囲では見てみた。
普通にかわいい人多いですね。男もイケメンけっこー多い。
もっとびくびくオドオドしたような男がいるかと思ったら、そんなの俺ぐらいで、積極的な男が大半でした。

ちっこいテレビで、本日の流れの説明ビデオが流れる。
ＨＰにある初回ビデオと、ほとんど内容は同じでした。
つーか、誰も見てねぇ．．みんな初めてじゃないのか、あるいは予習済みなのか。
熱心に見ていたんだけど、テレビをガン見してるのは、俺だけでした。

プロフィールカードを書いたら、アンケート記入欄みたいなのがあり、それも埋める。
それ埋めたら、開始まですることない．．
先走って目の前の女性と会話したりしたら、ＫＹ確定だし。
かといってうつむいてるのも、なんか印象悪そうだし．．
結局うつむいてましたが。

これから、目の前の女性と話し、終わったら男が横に１人ずつずれて、また目の前の女性と会話．．ということを繰り返し、全員と１対１で会話する。

ってか、人多すぎ。
合計６０人ですよ。３０組。
そして時間が全然無くて、１人との会話時間は１分。
１分て。
即終了じゃないですか。

スタートと次への合図は、司会進行役のスタッフがやります。
会話の途中でも、終了を宣言されたら、いやおうなく移動。
おまけにこの移動が、３０人も一気に移動するもんだから当然渋滞が出来て、なかなか動けねーの。
もう次の人との会話時間が開始されてるのに、まだ前の人の前に座っていたりすんの。
また話を再開するわけにはいかねーし、時間だけが過ぎていく。
最後のほうは、３０秒ぐらいしか会話してませんね。

チェックシートというのがあり、要するにメモなんですけど、これに相手の特長とか書きとめておいて、後で見返せるようになってます。
俺は、これの使い方を決定的にミスった。これが１０８番目の敗因。
俺は、すべての女性について、何かしらメモっていった。
全員の印象をまとめてから、改めて誰と話が合ったかとか考えようと思っていた。
だが、このときからすでにある程度合うか合わないか、選別をしておくべきだったのだ。３０人もいるんだし。
なんせ、これを書くのも１分に含まれてる時間の中でやるので、まともなことが書けない。

改めて、俺が書いたメモを見てみると
「バタフライエフェクト」←これは相手の女性の、オススメの映画の話で出てきた、映画のタイトル
「ハングルの人」←ハングルの勉強をしているという話題が出た。全体的に韓国好きが多かった。
「マカロニ」←マカロニサラダが嫌いだがグラタンはＯＫとかいう話が出た
「ＩＴ」←同業者
「看護師」←憧れ
「なし」←特徴が無いといいたかった。
もうね、アホかと。バカかと。
結局、３０人と会話が終わって改めてシートを見て確認したけど、誰がどうよかったのか、一人しか思い出せなかった。
１人だけは、とってもよかったので、欄に丸を入れておいたのだ。
３０人もいるんだから、最初からこーして、ある程度選別する必要があったのだ。

この後、全員の番号が書かれたカードに、気に入った人の番号３人に○をして、スタッフに渡す。
スタッフが集計し、自分を気に入ってくれた人がいたら、その人の番号がその紙に、ピンクのマーク付きで返ってくる。
自分が○を付けたところにそのマークがついていたら、双方が好印象とゆーことで、かなり嬉しいところだ。
俺は１人は○が出来たが、あとの２人は俺のメモによる、たった数文字の己の書き込みにより判断し、なんとか付けた。ほとんど記憶に無かったけど。

この後、休むまもなくフリータイム。
今度は３分ぐらい合計３回、好きな相手のところへ行って会話できる。
さっき３０人とぶっ通しで喋り続けて、もうここの時点で、俺の喉は乾きまくっていた。
前に水があるんだけど、それを飲んでる間も時間は進む。
とりあえず会話してこようと、一番気に入った人のところへ行ってみると、すでにイケメンと話てた。
他にも、その人と話そうとしている人までいて、なんとなく男性陣の見えない攻防が。
おお、俺の好みの人、モテてるやん。
かつてはマニアックの鏡と呼ばれた俺の好みも、結構一般的やんか。

しかし、とにかくさっさと誰か決めて席について、会話をしないとはじまらん。
近くに空いていた、失礼ながらあまり覚えてない人の前に座り、会話開始。
プロフィールカードを交換し、受け取った瞬間、あー間違えたと思った。
ほとんど何も書いてない、あんまやる気の無い人だと思い出した。
それでもとにかく会話をする。
ごくごく普通の会話で、３分は終了。

さぁ今度こそあの人と！と思ったらもう既に、また別のイケメンと話してた。
今度は、俺も○をつけた人をちゃんと確認して、その人のところへ。
美術が好きという人と、美術館トークでやや盛り上がり。本当にやや、程度だったけど。
相手の趣味の分野で、知識や経験があっても、会話盛り上げるのって難しいなー。
１人で喋ってるみたいになってるし。でも俺が黙ってたら何も喋ってくれんし。
これは普通に、どう好意的に解釈しても脈ナシではないでしょうか。

その最中、あの○つけたカードがさりげなくスタッフから手渡される。
会話終了後、こっそり見てみた。
ひとつだけだけど、ピンクのマークが付いてる！
俺が○した人じゃなかったけど、俺が良かったと思ってくれる人がいたんだー！嬉しい！
でも、１人３つ○が書けるって事は、一人当たりの平均○数は３つだから、余裕で平均以下ということに．．
．．更に、申し訳ないが、俺のその人の特徴を示すメモには「やすむ」とだけ書かれていて、もはや何が書きたかったのか、一体どんな人でどんな会話をしたのか、本人でも判断不能。
その人のところへ会話しに行こうと思ったが、あまりにも喉がつらいので水を飲む。
そして復活し、いざ！と思ったらもう別のイケメンと話てた。おのれイケメンめ。ってか俺以外全員め。

別に気に入ってるわけではないけど、話を長くしてた人のところへ行き、まったくもって適当に会話。
保育関係の仕事をしてる人で、仕事のことについて、まったくもって適当に会話。
改めて思うけど、こういうときにふさわしい会話って、なんやろう？
いきなり、どんな男がタイプですかって話するのもヘンだし、世間話ってのもなんか．．
まぁ雰囲気を知るって意味では、こんな適当な会話でいいのかも。

これで合計３人との会話が終了し、フリータイムもおしまい。
この貴重な最後の時間で分かったのは、現時点では３人とも、それほど俺との会話の相性が良くないということだけだ。どーすんだー。

最後に、第１希望から最大第６希望まで、相手の番号を記入して提出する。
俺は結局どうするべきか。散々迷った。
一番気に入った人とは、結局会話できなかったし、そーなると○もらえなかった時点でカップル成立無理は確定してる。
となると．．さっき会話したあの３人のうちの誰か？
１分しか時間がなく、即回収となったので、あわてて第一希望と第二希望にだけ、さっき会話した２人を埋めた。

集計後、番号の発表となった。
今回は８組のカップルが誕生したらしい。

もうこの時点で、適当に第一と第二の希望を入れたことを後悔してた。
あの人らと万が一カップルになったとして、これから楽しくやってけるとはとても思えなかったからだ。
なのに適当に埋めてしまった。

どきどきしながら発表を聞く。
幸か不幸か、俺の番号は呼ばれなかった。
意外にも、あの俺がお気に入りだった、モテ女もカップルにはなってなかった。
もしかしたら、今回は全員ボツと判断して、誰も書かなかったのかもしれないな．．

いやはや、勉強になりましたよ。
でも次は、もう少し人数の少ないパーティに出たいもんだ。
次があるなら．．