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2024/05/17 18:34 |
忘れえぬ接客用語
大学2回生 19歳の頃やってたバイト。

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地中海料理のレストランでは、料理人(熊殺し)に恐れおののき、中華料理屋の調理場でこの世の果てを垣間見た俺は、もう調理場からは足を洗い、楽そうなウエイターになろうと企んでいた。
過去に、調理場は猛烈に忙しく仕事してるのに、ウエイターの方達は楽しく談笑してらっしゃるのが、ムカツクほど何度も目に付いたりしていたからだ。

そうして見つけたのが、近所の高級焼肉店のウエイターである。
求人広告にて倍と募集を知り、時給も悪くなかったので、俺はさっそくここに電話をして、面接の約束を取り付けた。

次の日、面接のためにその焼肉屋に足を運んだ。
高級な店なので、それまで当然中に入る事はおろか、近づくことすらなかったのだが、改めて入ってみるとやっぱりものすごくゴージャスである。
ジーンズにTシャツで来てしまった俺は、黒服につまみ出されないかとビビってた。
ゴージャスな階段を上ると、ゴージャスな自動ドアが有り、それを抜けるとゴージャスなカウンターに、これまたゴージャスな店員が笑顔をたずさえていた。
しかし俺を一目見るなり
「ウッ 怪しい奴!」
といった顔を一瞬だけしたのを、俺は見逃さなかった。
俺は決して怪しいものではありませんオーラを出しつつ面接に来た旨を伝え、ほどなく店長との面接が始まった。
面接自体は普通の形式通りの質問が中心だったんだけど、驚いたのは3日間もの研修が有事だった。
しかも、遠路はるばる京都の本店で行われる。

次の日から早速研修である。
慣れない私鉄を乗り継いで散々迷って、予定より三時間も早く出たのに遅刻寸前でなんとか京都の本店に到着した。
地元の店も当然ゴージャスだったけど、この本店はそれよりも更にゴージャスである。
..ゴージャスって死語?

研修は、俺を含めて6人ほどで行われた。
俺と同じ店に入るのが五人、別の店が一人。
同じ店に入るのは、やたらと元気で頭悪そうな高校生男二人と、俺と同い年の女性二人。
ちなみに高校生は研修が終わるとすぐに辞めた。

前記の通り、研修は三日間。
会議室みたいな一室に閉じこもって、敬語の勉強や歩き方、目線やトレンチ(お盆)の持ち方。
200種類以上もあるメニューの、全てを記憶。
お客に聞かれたときに答えられるように、それぞれの肉が牛のどの部分の肉であるか等。
肉の食べ方。調理法。オーダーの取り方。
ワインの種類、味。
もう数え上げればきりがないぐらい、色々と教えられた。
例えばビールの注文一つ取っても、飲み物は何にすると聞いてビールといわれたら、まず生ビールか瓶ビールか、生ビールなら大か中か。
瓶ビールならグラスはいくつ持ってくるか。
基本的だけど、これが当て余るメニューが山のように有るのだ。

その研修でもっとも俺たちを苦しめたのは、接客8大用語と呼ばれる言葉の記憶である。
『いらっしゃいませ』
『はい、かしこまりました』
『少々お待ちください』
『お待たせいたしました』
『失礼します』
『恐れ入ります』
『申し訳ございません』
『ありがとうございます』
覚えるのにものすごく苦労したけど、これは確かに必要であった。
とっさのときに口に出る言葉は、覚え込んでいないとボロが出てしまうのだ。
ちなみにこれ、もう脳裏に染み付いているらしく、今言ってみたらちゃんと順番に全部言えた。恐ろしい。

毎日蝶ネクタイ締めて走り回って、夢見た談笑のウエイター達には程遠いほど忙しかったけど、俺はここで、大学卒業後会社に就職するまで一年近くバイトを続けた。
その間にいろんな事が有った。

前人未踏の18日間毎日12時間ずつ働きつづけて、具合悪くなって無理矢理病院に行かされて、医者に生まれて始めて過労と診断された事。
同じバイトの三つ年下の娘と付き合って、即フラれた事。
洗い物に集中していたら洗剤に負けて両腕がとんでもない事になったり。
俺だけ、辞めるときにお別れパーティをしてくれなかった事。

最も思い出深い、濃いバイト経験でした。

2007/04/23 12:16 | Comments(0) | TrackBack() | 仕事

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