俺は、おかんと旅行中。
山の峠道を歩いている。
おかんは、微笑みながらのんびり景色を見たりしつつ、あっちこっちへと行きながら、道をゆっくり歩く。
当然俺の方が歩くのが早いので、少し歩いては振り返って、おかんが来るのを待つ。
「フラフラし過ぎや。まっすぐ歩かんかい」
口ではそー言いながら、おかんが楽しそうにしているのが嬉しかった。
峠の道は車も通るので、そんなフラフラしてたら車に撥ねられるで、と言った瞬間に、おかんが車に撥ねられた。
それはもう見事な撥ねられっぷりで、軽く20メートルぐらいは吹っ飛んだ。
道に叩きつけられ、がけの下に転がり落ちていくおかん。
俺はあわてておかんを回収に行く。
すぐにおかんは見つかった。
ここから何故か、おかんがホットドックに変わる。
よく外国映画で出てくるような、道端の売店で気軽に買う、紙に包まれたホットドック。
でも確実にそれはおかんで、痛そうにうめいている。
俺はおかん(ホットドック)を抱きかかえ、泣きながら
「大丈夫だから!もうすぐ救急車来るから大丈夫!」と必死におかん(ホットドックを)励ます。
本当は救急車なんて呼んでない。こんな山の中から助けを呼ぶ手段なんて無い。
おかんは弱弱しい声で「もういいの。ありがとうね」とか呟く。
おかんの後頭部から、真っ赤な血がどんどん染み出してくる。
(絵:ホットドックからケチャップが漏れ出し、白い紙を伝ってポタポタ落ちる)
俺はそれを必死にぬぐって、なかった事にしようとした。
この出血量(ケチャップ)と、ぐったりとした感触のおかん(ホットドック)から、絶対に助からない事は分かっていたけど、絶対にそれだけは認めたくなかった。
おかんは、一緒に旅行行けて凄く幸せだったとか、私は良い母親だったかな?とかか細い声で俺に聞いてくる。
即答したかった。俺も幸せだったことを。次生まれ変わっても絶対また俺の母親になってくれって事も。
でもそれに答えたら、もうこのままおかん(ホットドック)が死んでしまう事を認めてしまうような気がして。
でも最期に、感謝の意を何も伝えられないまま逝かせてしまったら、死ぬほど後悔するかもしれない。
その二つの感情の狭間で揺れ、どうすればいいのか答えが見つからないまま、
「もう救急車来るよ!だから頑張って!また旅行も行けるよ!」
ともう、涙ばだばだで必死におかん(ホットドック)に叫び続ける。
そこで目が覚めた。
つっこむべきなのか...なんでホットドックやねん。
しかも、けっこーホカホカで旨そうやったしな。