俺のおみや

正直、趣味でマラソンする人って、頭おかしいと思ってました。

だって、走るなんてただ辛いだけやんか。
一体何が楽しくて、走ったりするのか理解できん。

そしたら身近にいやがった。頭おかしい人が。
ダイビングの仲間なんですけど、その人と潜りに行く道すがら話したら、
去年はハーフマラソンを走った、次はホノルルでフル走るとか言うんですよ。

ハーフて。フルて。
２１キロ？４２．１９５キロ？
それはもう自動車のレベルやないですか。へたすりゃ有料道路も視野に入れちゃうレベルちゃいますか。

思ったね。
この人、いい人だけどちょっと頭おかしい、と。

しかし、走るのが楽しいと素で言うもんだから、そーかそーか楽しいのか楽しいのなら俺もやってみるかと
翌々月にマラソン大会に応募し、出ました。

俺はプログラマなので、仕事中何時間も、１ミリも動かない事もしばしば。
一番負荷の高い運動といえば、マウスの操作ぐらいなので、疑う余地無しの運動不足。
だから最初はビビって５キロのマラソンにしました。

走り出して１分で後悔。
もう二度と走らない。一生走らない。
ちくしょう、奴の口車に乗せられて、こんな苦しい思いさせられてしまった。許すまじ。
そんな事を考えながら、のろいの言葉をぶつぶつ呟いていた。
それでも歩くのは自分に負ける気がして嫌なので、必死に５キロを完走してみた。
翌日、と言うかもう当日から超筋肉痛。階段の昇り降りに介護の手が欲しくなるほどの筋肉痛。

走ってみたけど、楽しさなんてさっぱりわからん。
そりゃあ終われば楽しいけど、そこにたどり着くまでどんなけ辛い思いせなあかんねん。
辛いのイヤ。
努力イヤ。
楽しい事大好き。
そんな俺には無理っすよ。

そーいや、彼はいきなりハーフに出たとかゆーてたな。
もしかしたら、ハーフぐらい長かったら、楽しいのかもしれんな。

試しにやってみた。
５キロ×２回、１０キロ×２回と続けて参加し、毎回もう二度と走らないと固く誓いながらも、いよいよハーフに出てみた。
守山ほたるのまちハーフマラソン。
その年は招待選手として、有森さんが来てた。

ハーフ走った。
タイムは冗談みたいに遅いけど、とにかく完走した。
そしてやっぱり、もう二度と走らないと固く誓った。
しんどいなんてレベルやないし。
ちょっと脱水症状起こしかけて、右半身痺れてるし。
もーやだ。

しかしそこで、俺は運命の出会いを果たしてしまうのである。

つづき。