俺はこの時、バイトを既に二つ掛け持ちしていた。
二つどころか、滅多に仕事がない登録バイトを含めれば、10を軽く越えるぐらいバイトをしていた。
そんな調子だから、学業の方は、もうどこに出しても恥ずかしくないほどのおろそかぶり。
単位はギリギリ、超低空飛行状態であった。
二つのバイトとは、俺が最も長く続けた高級焼き肉屋のウエイターと、新聞配達であった。
新聞配達の方は、朝に空いた時間を有効に使いたかったのと、バイクに乗りたかったからだ。
ちなみに当時俺の一日のタイムテーブルは..
まず午前3時頃、新聞を配りに行く。
あくび連発でアゴが砕けるほど眠いが、ふらふらと出勤。
ふらふらと配って、五時頃戻る。
学校へ行く用意をして、5時半頃家を出る。
六時頃駅に到着。
ここから三つの電車を乗り継いで、大学へ。
大抵寝過ごし、起きたらとんでもない駅まで連れていかれていたりすることもしばしば。
もう日常茶飯事なのであまり慌てないのだが。
18時半に家に帰ってきて、19時から肉バイト。
24時半にバイトが終わって二時間眠る。
こんな生活を一年も続けていた。
それなのに、肉バイトは週に4~5日ほどだったので、まだ余裕があった。
余裕があると埋めたくなるのは、今も昔も変わらない俺のアホなところ。
というわけで、俺は家の近くにあるファミレスの職にあり就いた。
しかしここでやって行くにはちょっと無理がありすぎた。
本業の肉バイトの方のシフト決定日と、ファミレスのシフト決定日が同じだったのだ。
このシフト決定日がずれていれば、肉バイトが休みの時に、ファミレスに行けるとほくそ笑んでいた俺の思いは
無惨にもうち砕かれた。
なんとなく即辞めの予感がしたが、とりあえず面接に行った。
ここでまず、いつもどおりの質問があり、次に研修としてビデオを見せられた。
どうにも古めかしい内容ではあったが、俺はとりあえず、することもないので真剣に見た。
しかしビデオでのある一言が、真剣に見つめる俺の顔を、ハニワ顔及び石化その後ムンクの叫び顔へと三段変貌させた。
...
ま、まぁ一応規則としてあるのかもしれないけど、まさか実際には使わないんだろうな、と、イスからずり落ちた体を立て直し、再びビデオに集中した。
やがてビデオが終わり、やっと解放されるヤレヤレと腰を上げると店長が来て、俺にメニューを手渡し、明日までに内容全て覚えてこいとかのたまった。
おいおい、英単語5つ覚えるのに1ヶ月とかかかってる俺が、そんな事出来るわけねーだろ。人見て話しろ。
とか思ったけど、ハイワカリマシタと口では言っておく。
次の日。
俺は指定された時間に行き、なんかめんどくさい服に着替えた。蝶ネクタイ仕様。
肉バイトでも、蝶ネクタイを付けるのだが、ここのはなんか安っぽくてものすごく変である。付けにくいし。
同じ時間に入る先輩の力を借りて、なんとか制服を着ることが出来た。
ややあって、店長が俺を迎えに着て、俺を色々な場所へ案内してくれる。
まず調理場に入ったときに、社員っぽい人が居たので、俺はここぞとばかりフレッシュ笑顔で
「おはようございます」と挨拶した。
飲食業界の挨拶は、朝であろうが昼であろうが夜であろうが
『おはようございます』
ではじまる。
店長に挨拶のことを言われていたわけではなかったので
ふふん見たか、俺の経験をぉぉぉぉ!と、アピールしてみたのだ。
すると店長はくるっと俺を振り返って
『挨拶は 「モーニングさんです」 でお願いします』
げほっ←吐血
あのビデオで俺がムンクになった台詞が再び..
まさかまさかマジでそんなコトするのか!
なんやねんモーニングさん、て。
もう挨拶はボソボソとやろうと決心。
確かにその後会う人みんな、小さくではあるが、モーニングサンですと言っている。
恐ろしい..俺には出来ない..
ココは未知の世界である。
店長は俺に歩き方や表情について指導をはじめた。
歩くときは重心をやや左足にかけろとか、水をテーブルに置くときは、小指を底にはさんで置いて、音を立てないようにしろとか、笑うときは歯ぐき見せるなとか、土地が高いとか、給料安いとか色々言うので、もうワケワカランく成った頃に、いよいよ仕事開始となった。
仕事と言っても最初は案内と水運び、後片づけぐらいである。
オーダーはまだ取らせてくれないらしい。
けっこーとれる自信はあったのだが..
客が来たら、案内して水を持っていって、オーダーをいわれる前にスタスタと逃げ出すのである。
客が来ないときは、水を持ってウロウロと目標を探す。
水を入れてるときに注文を頼まれたりしても、慌てて逃げ出して、先輩に任せるのだ。
この仕事内の人間関係は結構ドライである。
肉屋バイトなら、一人が後片づけをやっていても、手が空いてるならもう一人がそこに行って手伝ったりするのに、ここではそんなことはない。
手が空いていてもボケーーっと虚空を眺めていやがるのである。
非常に面白くない。
面白くない気分のまま、なんとか一日目のバイトが終了した。
そしてもう二度と、俺がそこで働くことはなかった..
二つどころか、滅多に仕事がない登録バイトを含めれば、10を軽く越えるぐらいバイトをしていた。
そんな調子だから、学業の方は、もうどこに出しても恥ずかしくないほどのおろそかぶり。
単位はギリギリ、超低空飛行状態であった。
二つのバイトとは、俺が最も長く続けた高級焼き肉屋のウエイターと、新聞配達であった。
新聞配達の方は、朝に空いた時間を有効に使いたかったのと、バイクに乗りたかったからだ。
ちなみに当時俺の一日のタイムテーブルは..
まず午前3時頃、新聞を配りに行く。
あくび連発でアゴが砕けるほど眠いが、ふらふらと出勤。
ふらふらと配って、五時頃戻る。
学校へ行く用意をして、5時半頃家を出る。
六時頃駅に到着。
ここから三つの電車を乗り継いで、大学へ。
大抵寝過ごし、起きたらとんでもない駅まで連れていかれていたりすることもしばしば。
もう日常茶飯事なのであまり慌てないのだが。
18時半に家に帰ってきて、19時から肉バイト。
24時半にバイトが終わって二時間眠る。
こんな生活を一年も続けていた。
それなのに、肉バイトは週に4~5日ほどだったので、まだ余裕があった。
余裕があると埋めたくなるのは、今も昔も変わらない俺のアホなところ。
というわけで、俺は家の近くにあるファミレスの職にあり就いた。
しかしここでやって行くにはちょっと無理がありすぎた。
本業の肉バイトの方のシフト決定日と、ファミレスのシフト決定日が同じだったのだ。
このシフト決定日がずれていれば、肉バイトが休みの時に、ファミレスに行けるとほくそ笑んでいた俺の思いは
無惨にもうち砕かれた。
なんとなく即辞めの予感がしたが、とりあえず面接に行った。
ここでまず、いつもどおりの質問があり、次に研修としてビデオを見せられた。
どうにも古めかしい内容ではあったが、俺はとりあえず、することもないので真剣に見た。
しかしビデオでのある一言が、真剣に見つめる俺の顔を、ハニワ顔及び石化その後ムンクの叫び顔へと三段変貌させた。
...
ま、まぁ一応規則としてあるのかもしれないけど、まさか実際には使わないんだろうな、と、イスからずり落ちた体を立て直し、再びビデオに集中した。
やがてビデオが終わり、やっと解放されるヤレヤレと腰を上げると店長が来て、俺にメニューを手渡し、明日までに内容全て覚えてこいとかのたまった。
おいおい、英単語5つ覚えるのに1ヶ月とかかかってる俺が、そんな事出来るわけねーだろ。人見て話しろ。
とか思ったけど、ハイワカリマシタと口では言っておく。
次の日。
俺は指定された時間に行き、なんかめんどくさい服に着替えた。蝶ネクタイ仕様。
肉バイトでも、蝶ネクタイを付けるのだが、ここのはなんか安っぽくてものすごく変である。付けにくいし。
同じ時間に入る先輩の力を借りて、なんとか制服を着ることが出来た。
ややあって、店長が俺を迎えに着て、俺を色々な場所へ案内してくれる。
まず調理場に入ったときに、社員っぽい人が居たので、俺はここぞとばかりフレッシュ笑顔で
「おはようございます」と挨拶した。
飲食業界の挨拶は、朝であろうが昼であろうが夜であろうが
『おはようございます』
ではじまる。
店長に挨拶のことを言われていたわけではなかったので
ふふん見たか、俺の経験をぉぉぉぉ!と、アピールしてみたのだ。
すると店長はくるっと俺を振り返って
『挨拶は 「モーニングさんです」 でお願いします』
げほっ←吐血
あのビデオで俺がムンクになった台詞が再び..
まさかまさかマジでそんなコトするのか!
なんやねんモーニングさん、て。
もう挨拶はボソボソとやろうと決心。
確かにその後会う人みんな、小さくではあるが、モーニングサンですと言っている。
恐ろしい..俺には出来ない..
ココは未知の世界である。
店長は俺に歩き方や表情について指導をはじめた。
歩くときは重心をやや左足にかけろとか、水をテーブルに置くときは、小指を底にはさんで置いて、音を立てないようにしろとか、笑うときは歯ぐき見せるなとか、土地が高いとか、給料安いとか色々言うので、もうワケワカランく成った頃に、いよいよ仕事開始となった。
仕事と言っても最初は案内と水運び、後片づけぐらいである。
オーダーはまだ取らせてくれないらしい。
けっこーとれる自信はあったのだが..
客が来たら、案内して水を持っていって、オーダーをいわれる前にスタスタと逃げ出すのである。
客が来ないときは、水を持ってウロウロと目標を探す。
水を入れてるときに注文を頼まれたりしても、慌てて逃げ出して、先輩に任せるのだ。
この仕事内の人間関係は結構ドライである。
肉屋バイトなら、一人が後片づけをやっていても、手が空いてるならもう一人がそこに行って手伝ったりするのに、ここではそんなことはない。
手が空いていてもボケーーっと虚空を眺めていやがるのである。
非常に面白くない。
面白くない気分のまま、なんとか一日目のバイトが終了した。
そしてもう二度と、俺がそこで働くことはなかった..
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