俺のおみや

ＩＣＯＣＡ（イコカ）は、ＪＲ東日本のＳＵＩＣＡ（スイカ）のＪＲ西日本版である。
アタマのよさそうな言い方をすると、非接触型ＩＣカードといい、よーするに機械に触れなくても近づけるだけで、カードの情報を読み取ってくれるという、今もっともトレンディでゴージャスでデリシャスな技術である。

２００３年１１月１日。イコカカード発売開始。
ちょうどこの日に定期の切れた俺は、早速イコカ定期券を購入した。
そして出勤の朝。
ドキドキしながら改札機の100km手前ぐらいからイコカを取り出し、定期入れに入れたまま右手にぎゅっと握って、改札機に近づいた。
多くの人が普通の磁気定期券で改札機を通る中、ちょっと優越感に浸りながらもイコカ初心者であることがバレないように、慣れた手つきで改札機のイコカを押し当てる部分に、イコカを触れさせた。
．．．ピッ。
一瞬のタイムラグの後、改札機のディスプレイに「ありがとうございました」と表示され、俺は改札機を抜けた。
ワーイワーイ！どうだ見たか皆の衆！！これがイコカだこの野郎！
と、ココロの中で大絶叫しながら、当然のようにすたすたとホームに向かった。

次に駅から出る時。
今度は磁気定期券のように、改札機の前で立ち止まる事無くイコカをタッチして歩きつづけてみた。
するとイコカを認識した時のピッという音が鳴らずに、バタンと扉を閉められてしまった。
ディスプレイには「もう一度イコカを当て直せ」みたいな事が表示されていた。

ここまでで出たイコカ利用についての結論。
確かにイコカはなかなか愉快なアイテムである。
が、あの一瞬のタイムラグは気になる。
俺の足が無駄に速いのか、機械の読み取るのが遅いのかは分からないけど、あれじゃ磁気定期券のようにはスタスタ歩けず、一瞬立ち止まる必要があるような無いような。
少なくとも、俺は立ち止まる必要があるらしい。

次の日。
これで３度目のイコカ使用。
改札機を出る時に、事件は起った。
これまでと同様にイコカを触れさせて出ようとしたら、バターンと扉が閉まって
「も一回やり直せ」との事。
ホイホイと戻ってイコカを触れさせるも、またしても改札機はピンポーンとか言って怒ってる。
その後、カードをべたっと接触させたり、縦にしたり横にしたり斜めにしたり裏向けたりしてみたが、何度やってもピンポーンと怒りっぱなし。
「もう一度やりなおせ」とか
「連続入場は出来ません」とか
「アホ通るべからず」とか改札機の中の人に言われたい放題。
何も願い事なんてないのに、朝から改札機の前で行ったり来たりのお百度参りをさせられて、俺は非常にアタマにきた。
俺が閉められる前に横を通った女性の方も、イコカを触れさせる時に立ち止まって慎重にやっていた事から、どーやら閉められた経験があるのは、俺だけではないと思われる。

結論。
もう二度と一生イコカなぞ使うかボケッ！！
大体、イコカのウリである「パスケースに入れたまま定期券が使える」というのは、俺にとって猛烈にどうでもいい事なのである。
俺はパスケースから定期を出し、改札機に通し、改札機から定期券を受け取ってパスケースに戻すという一連の作業を、歩く速度を緩めることなく流れるように素早く、しかもすべて片手でやれるという、無駄に高度な技を持っているのでそもそも不要なのだ。

おそらくイコカと俺の相性が悪いのは、俺に
「切符を握り締めるだけで磁器を壊せる」という超能力があるためであろう。
俺から出るノイズや電波が、イコカと改札機の関係を邪魔しているのであろう。
ヘイヘイ、邪魔者は去りますよ。俺は今までそうやって生きてきましたし、これからもそうやって生きてきますよ、おふたがた、どうぞ御幸せに。あっしは旅に出ますよ。


もう今は、かなり認識率も良いみたいやね。
でもこの時のトラウマで、これからも多分使いたいとは思わんな。