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2024/11/23 10:04 |
熱中症 その1
Xデー前日。
7日間連続東京出張(軟禁)という激務を終え、普通の生活に戻れた日。
久しぶりに仕事帰りにジムに行けた俺は、超張り切っていた。
一週間運動できなかった不満をぶつけるべく、そりゃあもう日本の発電は俺に任せろと言わんばかりに、あっちこっちの器具をガンガン振り回した。
そして猛腹筋後、続けて背筋を鍛えるマシンに座った瞬間、事件は起きた。
おなかが、痛い..のか?
いや、腹痛というよりも、おなか付近に、ものすごい違和感。
腹筋のし過ぎで内臓の位置が変化してしまい、それを体が強引に元に戻そうとしているかのような。
あまりの激痛に、座ったまま動けず。
頭にぱっと浮かんだのは「腸捻転」。これが一番しっくり来る病名だった。

でも数秒で回復したので、そうか上半身は限界かでは他の部分をば、と
自転車20キロこいで、その後普通に1キロ泳いで帰った。
その間も、ずっとおなかはなんか、内部がうにょうにょ動いている感じがして、落ち着かなかった。

そしてXデー当日。
朝起きても、おなかは相変わらずうにょうにょ。
そして猛烈にダルい。
まぁダルいのはいつものことだし、俺も今流行の「仕事中だけ鬱」だし。
これは石油でも掘り当てない限り改善されることは無い精神的なものだしで、気にせず出勤。

しかし、何かがおかしい。
おなかが少しずつ、痛みを伴ってきた。
おまけになんか頭痛い。
病弱な俺にとっては、腹痛や頭痛ごとき日常茶飯事で、特技欄にも自信を持って書けるレベルなんですが、それでもこれは、なかなかに強烈だった。
あー、昼から外せない会議あるからそれだけは出て、早退すっかなぁと、痛む頭の中で思った。
早退なんか今まで一度もしたこと無いけど、そう思うぐらいにはキツかった。

そして昼休み。
これはきっと休めば治るようん寝てしまおう、と、いつものように昼寝開始。
もう3年ほど毎昼使用している、お気に入りのおやすみ羊と共に、安眠を開始した。

昼休みの終わりごろ、目が覚める。苦痛と共に。
症状は一気に進行しまくっていた。
吐き気、おなかの強烈な痛み、噴出しまくる汗。
手足と足先および顔全体の強烈な痺れ、まさに指一本動かせない状態。
多分高熱も。

とりあえず吐き気をなんとかしないと。
動けるうちにトイレへ..と思ったけど、俺の経験が、椅子から立ち上がったら、一気に症状が進行すると告げている。
あかん、今は動けない。
尋常でない汗が出て、上半身のシャツをベトベトに濡らしていくのが分かる。
呼吸が小さく荒くなり、痺れの範囲もどんどん広がってる。
かつて半身が痺れた時に、救護の人から
「痺れが心臓に到達したらアウト」
とか聞いていたので、痺れの範囲を自己診断しながら、まだ大丈夫?もうすぐアウト?
アウトならもう早く終わらせて欲しい、と朦朧とした頭で考えていた。
周りでキーボードを打つ音が、極端に遠ざかったり戻ってきたりしている。
こりゃホワイトアウトすんな。その前に床に落ちておかないと、頭打つとやばい。でも動けない。
俺のように数ヶ月に1回ぐらいはホワイトアウトしているベテランでも、さすがに麻痺はヤバいと思った。

そこに上司が通りかかったので、必死に顔を向けて、体調悪いと伝えようとしたら、口が半分ぐらい麻痺してて
「たいひょうわいい」
みたいな言葉が、かろうじて口から出た。
即座に異常を察知した上司は、救急車呼ぶか?と聞いてきた。

うっ、救急車か。
最近では酔っ払いとか、たいした症状でもないのに救急車を呼ぶ人が増えていて、本当に必要な所に行き渡らないとか言う話をよく聞く。
俺ももしかしたら、安静にしていれば回復するかもしれない。
そう思ってしばらく二の足を踏んでたんだけど、またホワイトアウトしかけたので、もうとりあえず頷いておいた。
救急車を呼ぶ際に上司が症状を説明し、
「過呼吸になってるから、息を止めるよう心がけよ」
という救急センターからのアドバイスを、上司経由でもらう。

そうか過呼吸か。
病弱マスターの俺としたことが、こんなローキック並みに基本である技を忘れていたとは。
過呼吸の場合は、深呼吸もダメ。
ベストは自分の吐いた息をまた吸うのがいいんだけど、手も動かないのでそれはできない。代わりに時々息を止めて、吸気を抑える。
そしていると、なんかだんだん痺れが回復してきた。
症状の半分は、俺が勝手に過呼吸で作り上げてたくさい。
つまり、ほとんど詐病!おれおれ!おれおれ!
あれ?もしかしてわたし、このまま治っちゃう系男子?
これだと、救急車の人に怒られね?
うそじゃないよーほんとだよーほんとに狼はいたんだよー。

過呼吸が落ち着き、意識がはっきりしてくると、周りの状況が認識できるようになってきた。
もう昼休みは終わって、ほとんどの人が普通に仕事しているけど、
通路の真ん中で椅子に座って、プルプル震える俺を、みんなちらちらと西野カナを見るような目で見てくる。
うわー、顔面麻痺ってるからよくわからんけど、いつもと大して変わらない酷い顔してるだろうなー。いつもどおり恥ずかしいなぁ。
背後左右には社長と部長が、たまに肩をさすったり、手を触ったりしてくれるんだけど、痺れてるから地味に痛い。
でもせっかくしてくれてるのにと思って耐えてたけど、あまりにも痛いので
「痛いです」
と伝え、止めてもらう。ホンマすんません。

体感的には20分ぐらいで救急車登場。
というより、ドヤドヤとオフィスに人が入ってきたから分かった。
救急車の音の記憶が無いけど、来るときは鳴らさないんだったっけ。

救急隊員の人に、名前とか生年月日とか身長とか色々聞かれる。
なんか同じこと何度も聞かれたけど、多分意識があるかどうかとか試しているのかなーと推察。
それで車椅子に移動ということになって、嫌な予感はしていたけど、やっぱり足はまともに動かなかった。
俺がプルプルしてた現場は2階にある。うちの会社はバリアフリーじゃないので、その車椅子のまま、階段をガンガン降りた。なんかそういう特殊な車椅子らしいけど、割と後ろに体重かけてないと、前に転がり落ちそうな雰囲気は醸し出してた。

救急車に突っ込んで、そこでも改めて色々と聞かれる。
個人情報保護とかいうのがあるので、会社の人の目があるところではダメで、車内でしか聞けない事もあるらしい。
まず最初に
「発症する直前に、上司に叱責されるような、強いストレスを受けることはありませんでしたか?」
と真顔で聞かれ、ちょっと苦笑い。
「多分無いと思います。今日はまだ、怒られてません」
と回答。
ストレスに起因する症状に近いのかなーと思った。

つづく

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2012/08/01 20:11 | Comments(0) | 日常

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