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2024/11/23 13:59 |
劔岳に、いざ参る その4
テントに飛び込み、ザックから必要な荷物を出し入れし、濡れた体を拭く。
下着まで濡れたので、すっぽんぽんになって、濡れた服をテント内に干す。
今ここで、どっかの女性がテント間違えて、入り口ガバッと開けちゃったりしたら、俺捕まるのかな。迷惑防止条例違反とか、猥褻物陳列罪とかになんのかな。
メジャーなテントだと、そんな危険も高まりそうだよね。
俺のテントは重いというささいな弱点さえ除けば、広いし安いし丈夫だしで、とってもいいテントなんだけど、同じ種類の1人用は見かけたけど、俺と同じ2人用は、少なくともアルプス界隈では見たこと無い。比良では1人だけ見たことあるけど。しかも女性で。
大体みんな、軽さにこだわり過ぎなんだよ。
重けりゃ己を鍛えろ。

ラジオをつけてみると、AMが2局だけ拾えた。
ひとつは高校野球と、もうひとつは5時間番組とかなんとか。
5時間番組がバラエティーみたいで、びっくりするぐらいくだらない内容だったけど、せっかくなのでそれを聞きつつ、お昼ご飯を作成。

さーて、何を食うかなー。
その時の気分で決めたいので、ありとあらゆるインスタント系食べ物を持って上がる。
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まずはお湯だけでできるお味噌汁。
これはもう山での食事の基本。毎食食う。
そして、とっくに賞味期限が切れたパック物のご飯と、レトルトビーフカレーをチョイス。
パックものご飯は安いし、しっかりボイルすれば割とおいしい。失敗すると絶望的にマズいけど。
一番の難問は、ボイル中に浮いてくるご飯パックを、いかに沈めておくか。
手ごろなサイズの石を乗せておくのがベストだが、この手法では、いつの間にか石がパックからずり落ちたりする事と、石が猛烈な熱を持つことに気をつけろ。
俺は素手で掴んで、小惑星探査機ハヤブサの軌道に影響するぐらい絶叫したわ。
 

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食事も終わり、ごろんと寝転がる。
テントを雨粒がたたく音を聞きながら、ぼんやりする。
地上はるか3000メートルで寝そべる俺。
夜になるにはまだまだ時間があり、明日は山頂へのアタックが控えている。
雨音に混じって、外から誰かの話す音、誰かがテン場に来る音、出発する音がかすかに聞こえる。
雨脚が強くなったり、弱くなったり。
それにあわせてテントに当たる雨の音も、強くなったり弱くなったり。
時間がゆっくり流れていって、いつの間にか少し眠っていたりする。
こういう時、あぁ、山っていいなって思う。

起きたらまた腹減ったので、ラーメンを食べる。
あれ?食事回数が予定以上に多くなりそうな気がする。
これは二日間ももたないんじゃないのか。
まあいいか。いざとなったら室道まで降りれば、売店で土産物売ってるし。
その時は、銘菓雷鳥を買い占めて、むさぼり食うとしよう。あれおいしいよね。

寝転がって、本を読む。
一冊しか持って来てないから、ゆっくり読まないと。
しばらく読んでいると、外で誰かの「晴れてきた」という声が聞こえた。
なにぃ!そりゃあ確かめねば!
起き上がって、出かける前にファッションチェック。
うむ。裸だ。
とりあえず外に出ても犯罪にならない格好まで着衣率を高め、外に出る。

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おおおー。確かに青空が少し見えてる。
さっきまでみんなテントに篭っていたのに、這い出してきてる。
面白いことに、みんなテントの側に立って、青空が見える同じ方向を向いてるのな。
ここに居る人は、ほとんどが明日、劔を目指す人で、晴れて欲しいみんなの思いは同じなんだよなー。少なくともみんな山好きで、でも共通点はそれぐらいで、後はみんなバラバラ。
そんな人たちが集まって、同じ方向向いてて、俺もその「みんな」の1人で。
同じでありながら、ぜんぜん違う。一体感があるような無いような、そういう感覚が感じられるのも、山のテント場ならでは。
こういう時、山っていいなって思う。

少しだけど劔岳も見えてきた。
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テントから背もたれ付のイスを出してきて、見え隠れする劔岳を眺めながら、コーヒーを沸かして飲む。
雲が現れては消えて、劔岳は見えたり隠れたり。
俺は今、劔の目の前にいるんだなぁ。
明日はあそこに行くんだなぁ。
どんな景色が観られるかなぁ。
ものすごくワクワクする。ニヤニヤが止まらない。
やべー。むちゃくちゃ幸せ感じてるわ、俺。

そして幸せの絶頂に呼応するように、一気に雨が降る。
ああーせっかく至福の時だったのにー。
仕方なくテントに逃げ込む。

空腹で無いなら、次は酒といくか。よし、ワインを飲もう。
テントの中で、ワインをくぴくぴやってると、雨音がまた途絶えた。
テントから飛び出して、またイスをくゆらせながら、ワイン片手に劔を眺める。
ワインがなくなったので、焼酎に切り替える。
また腹が減ってきたので、明日の行動食にする予定だった、じゃがバタープリッツを食いつつ、焼酎を飲む。
あぁ、すばらしい酒ですな。
なぜか頭の中で、松任谷由実の卒業写真がエンドレスで流れる。
何でか分からんけど、劔にはこの曲が似合うわ。
お前らも行ったら分かる。きっと歌うよ。

また雨が降ってきたので、テントに引っ込む。
酔っ払ってた事もあり、そのまま熟睡。
起きたら完全に夜でした。
雨は止んでいたけど、曇っていた。
顔を突き出して空を見上げてみたけど、星はほとんど見えませんでした。残念。
まぁどーせ、俺の視力じゃ大して見えないけど。

夜明けまで6時間ぐらい。
まずい時間に起きてしまったなー。
目が覚めたけどすることが無いので、本を読む。
読んで、少し寝て、また読んでを繰り返していたら、2時ぐらいに読破してしまった。
しょーがないので横になり、また振ってきた雨音なんかを聞きつつ、眠れないなーこれは朝まで眠れないかもなーとか思ってたら、余裕で寝てた。
このテン場で、累計10時間ぐらい寝てるわ。

つづき。
 

2011/08/15 11:05 | Comments(0) | TrackBack() | 登山

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