俺のおみや

新しく、中国人の技術者と同じチームになったんです。
なんちゃって管理職である俺の、一応部下ということになるんですが。
こいつがね、いちいちかわいいんですよ。

質問に来たりするんですけど、日本語がまだあまりうまくないので、なかなか言いたいことが伝わらなかったりするんですね。
俺は、中国語か英語を使ってもいいよと言うんですけど、日本語が上手くなりたいという一心で、決して中国語や英語に逃げたりせずに日本語を使うんです。まぁたまに筆談もしますが。
最初の頃に比べたら、徐々に日本語も上手くなってきてます。
そーとー勉強してるんでしょう。
その一生懸命さが、まずかわいい。

休日前になると、色々と誘ってくれるんです。
紅葉を見に行くので、一緒に行きましょうとか、京都のどこそこに観光に行くので行きましょうとか、にこにこしながら誘ってくれるんです。
あいにく予定が合わなくて、一度も応じることは出来てないんですが、それでもまた誘ってくれたりするんです。

仕事も一生懸命だし、技術者としてもそこそこ知識もセンスもあるし、いいなーと思ってたんです。

先日、作ったプログラムにある問題があって、それの解決に付き合って深夜になったことがあったんです。
前からやけに熱心に俺を食事に誘ってくれてて、この時も誘われたんで、この日一緒に飯を食いに行ったんです。ゆーても近所の安い丼屋ですが。

待ち合わせて別々に会社を出て、俺のほうが先に着いたんです。
まぁその内来るだろうと適当に食券を買って、雑誌を読みながら待ってました。
そしたら程なくして現れて、注文して飯を食いました。
飯を食いながら、いつも仕事を教えてもらって感謝している的な事を、これまたたどたどしい日本語で伝えてくれました。
ま、まぁ仕事だしねーとクールに言い放ちながらも、近年まれに見る純粋さに、ちょっと心打たれてました。
それと、また食事に行きましょう。お世話になってるので、次はおごらせてくださいと言われました。
今回もおごるつもりだったらしくて、空気読めない俺がさっさと自分の分を買ってしまったので、奢れなくなってしまったと、これまたニコニコしながらゆーてきたんです。

いやね、正直なんでそんなに奢りたいのか意味がわからんかった。
お世話ゆーても仕事だけですし、それほど親しくしているわけでもない。
数百円の丼わざわざ奢られても、別に嬉しくねーしなぁとか考えつつも、あははありがとうと軽く流しておいたんです。

そしたらね。
「初めての給料で、檪さんにごちそうしたかったんです」
って、天使のようなニコニコ顔でゆーてくるんですよ。
これには参った。
奢りたいなんて意味わからんとかゆーてる俺に、そんな言葉をくれるなんて。
自分が恥ずかしいわ。
まだ日本にもこんな．．いやいや日本じゃないけど。

惜しむらくは、奴がボウズ頭の厳つい男であるところか。
女だったら、恋愛に発展しかねんところだよ。あぶねーあぶねー。