俺のおみや

流動食に耐え切れず、天使に「食事止めて」と伝えたわけですが。
当然「はいそうですか」と事が運んだわけではなかった。

それからも、普通に流動食は届けられ、ドカドカと机に並んだ。
全く手をつけないので、夜になると机に乗り切らないぐらい、流動食が並ぶ。
最終的に、夜に天使が来て、今日は何本飲めました？え？ゼロ？やれやれ。ゼロはお前の頭の中身と口座の残高だけにしてほしいわホンマ。
そしてそれらを下げる、というのが日常になった。
そのたび俺は死ぬほどヘコヘコして、本当に申し訳ないと恐縮しまくって心痛めるというのも、日課である。

しかし、このままでは、さすがに病院側としてもマズイだろう。
点滴で、無理やり栄養摂らせるみたいな形になるかもしれんと思っていた。
せっかく管は全部なくなったんだから、点滴復活はぜひとも避けたい。
でも俺のわがままで食わないんだし、どんな対応されても文句は言えない．．
毎日ビクビクしながら、カロリーゼロの日が続いた。

そんな日々が３日ほど続き、ついに病院側が次の手を繰り出してきた。

それこそが、ミキサー食である。
簡単に言うと、食物を液状に磨り潰したもので、離乳食を思い浮かべてもらうと大体正解。
それなら甘くないし、変化もあるし、食べられるんじゃね？
と、意見が一致し、次の食事からミキサー食となった。

一体全体、大帝はどんなんなんだろう？

そして、ついにその全貌が明らかに！

ばばーん！　これがミキサー食Withジョアと五分粥だっ！










いえーい！左に見える緑の液体は、小松菜のおひたしだっ！
右上のは、サバだぜサバ。
右はお汁で、真ん中は五分粥。
どれも食感は同じ。
だけど、ちゃんとサバとか小松菜の味がするの！
当たり前だけど！

もうね。必死に食った。
目頭がジンとなった。
本当に久しぶりに、まともな食事したって感じした。

ただね。
ミキサーといえども、完全に液体ではないんよね。
だから、わずかに残された歯の隙間からすすってると、その隙間が詰まるの。
しょうがないから、歯磨きするの。
そしたら隙間が空くから、また食事再開。
そしてまた詰まって歯磨き、を繰り返すの。

左上に、コップに刺さった歯ブラシがあるっしょ？
最初はいちいち洗面所にいって、磨いていたんだけど、食事中は１分おきに歯磨きが必要なのな。
面倒なので、左手に歯ブラシ、右にスプーンを持ち、食っては磨き、磨いては食うという無敵のフォームで、食事に挑んでた。
人様には絶対に見せられない姿でした。

んで一番左上に白い容器があるんだけど、これミルクプリン。
これがまた、むちゃくちゃウマいのな。
歯が開かなくてもスルっととろけて、甘すぎなくて、ほんまにうまいの。
あまりにもうまいもんで、後にとっといて、おやつの時間まで我慢してから食べたりしてた。
メーカーとか書いてないから、食事センターみたいなところが作ったものみたいだけど、本当にうまかった。
人生で、最もうまいプリンと言っても過言ではない。

まだまだ続く、ミキサー食。
食べにくいけど、栄養面での不安がゼロとなったのは大きい。








おひたし、サツマイモのレモン煮、なんとかの照り焼き。








朝食は簡素。
右が、カニのなんとか。
左しぼったオレンジ。









ミキサー食で一番おいしかったのが、左下のオムレツ。
どういう仕組みになってんのかわかんないんだけど、プリンみたいな硬さで、ちゃんとタマゴなのな。しかもデミグラスソースかけですよ。これはたまらんわ。

あと、意外にもおかゆがウマい。
いや、そのまんまだったら、何の味も素っ気も無いんですけど、そこで登場するのがゆかりですよ。
バヨ仲間に、入院するんだったらゆかりもってけ、とアドバイスもらってましてね。
ゆかりかけたら、むちゃくちゃウマいのな。
ゆかりなんて、小学校の給食以来ですけど、かわらずウマいんです。
まさに、おかゆにも後々出会う白米にも合う、すばらしい一品です。
おまけに、粒が細かいから、口が開かなくても詰まったりしないんですよ。
これのおかげで、おかゆがめっちゃおいしく楽しめました。

こんなミキサー食の日々を過ごす中で、どーにかしてこの、歯磨きとスプーン二刀流が、なんとかならねーかなぁと調査と対策案を模索していた。

そしてついに、俺はこの問題を克服する！