俺のおみや

とにかく、まずは人情味あふれた暖かいものが食べたい。もとい飲みたい。
そーだ。缶のコーンポタージュを買いに行こう。
早速そばの自販機で買ってきて、飲んでみる。










もうね。涙出そうになった。涙そうそうだった。
あったかくて、とっても人間的な味なの。
手術からこっち、初めて食べ物をとったって気がした。
コーンは当然残したけど、それでも本当においしかった。
あの泣きたいぐらいマズい流動食とは、比較にならない。愛があるわ。

人心地ついた俺は、次なる作戦を開始する。

いかにして、カロリーを摂取するか。
俺の口は開かないので、水もしくはゼリー系のものしか口に出来ない。

まず考えたのは、先ほどのコーンポタージュ同様、飲み物である。
飲み物なら簡単に飲めるし、世の中にはおいしい飲み物がいっぱいあるんだから、選択肢はめちゃくちゃ広い。
今まで流動食いっぽんやりで、バリエーションと呼べるものは皆無だった。
こりゃこれから、食事が楽しくなりそうですなーと、病院内の売店に行ってみる。

飲み物のコーナーに行くと、あるわあるわ、山のように飲み物が。
それらのカロリーを逐一チェックする。

最近の飲み物って、むちゃくちゃローカロリーなのな。
ほとんどがゼロキロとか謳ってんの。
アホか。俺はカロリーがほしいんだよー。

散々調べた結果、一番カロリーが高いのは牛乳でした。
うーむ。牛乳は確かに好きだけど。
しかしそれでも、カロリーが少なすぎる。
牛乳だけで2000kcal摂ろうと思ったら、何リットルも飲まないとならん。
そんなに飲んだらチーズになるわ。
あかんな、飲み物はあかん。

続いて、プリンやゼリーに目をつける。
ウイダーインゼリーは、150kcalほどあるので、これを２個ほど買ってみる。
あと、生クリームがうねうねしている、いかにもカロリー高そうなプリンも買う。

病室に戻り、ウハウハ言いながら、まずはゼリーをいただく。
１０秒チャージ！と気持ち叫びながら吸い込む！

うん。味はいいよ。ちょっと甘いけど、まぁ悪くない。
ただね。
ゼリーといえど、歯が閉じた状態で隙間から吸いだすのは、ものすごく大変。
普通に、食べきるのに１時間以上かかったからね。
しかも吸いすぎて、息も絶え絶え。唇が痛い。頭痛も痛い。
何で俺、こんなに吸引力を鍛えてるねんろ。吹奏楽のトレーニングみてーだ。

しばらく休んで、体力が回復したところで、お次はプリンだ。
まずはメインのプリンをば。












うむ。んまい。ゼリーよりも吸い込みやすい。
これはヒットかもしれん。
ただ、上に載った生クリームは、吸い込みにくい。
歯に残されたわずかな隙間が、詰まってしまう。
普段、生クリームの密度とか考えたことも無かったけど、硬さレベルは
プリン、生クリーム、ゼリーの順番なのな。

しかしプリンも、豪快にわっしわっしと食えるわけではない。
ほんのわずかをスプーンに載せて、唇で覆い隠すようにして吸い込み、歯の隙間から口の中に入れる。
とても人には見せられない捕食シーンである。

調子に乗って、お湯に溶かす粉物をためしてみる。
おかんに、うちにあった粉物を持ってきてもらう。








野菜スープ！
やっぱお菓子ばっかり食ってたら、大きくなれんしね。

しかしこれはダメだった。
スープといえど、粉がすぐに歯の隙間を埋めてしまって、跳ね返されるようになる。
歯磨きなどをすれば、歯の隙間はまた開くんだけど、一口ごとに歯磨きが必要な状態に。
これはあかんわ。
ちなみにクノールだったかのパンプキンスープは、パンプキンのかけらは当然ダメだけど、スープ自体は問題なく飲めた。

しかし、歯の隙間がもう少し大きければ、吸い込むのも楽なのになー。
そういえば、手術が終わってからずっと鼻呼吸のみ。
ちょっと動くと息が切れるのは、体力の低下もさることながら、そのせいもあるかも。

歯の隙間といえば、一応左右奥歯の奥は、隙間があるはずなんだ。
ここにストローを刺して吸い込めば、一気にいけるんじゃないだろうか？

ストローを無理やり歯の奥に突っ込み、差し込んでみる。
差し込むことは何とか出来たんだけど、それで何かを飲むというのは無理っぽい。
なんとかならんかと、ストローを咥えて振り回して、散々試してみたけど、これはどうも無理っぽい。
やっぱり、大人しく真正面の歯の隙間を利用するしかないみたいだ。

そんなこんなで、１日に合計500kcalぐらいは、間食により摂取する日々が続いた。
2000とかやっぱ無理。
体重の低下は、ロマンティックぐらい止まらなかった。