手術が終わって、翌日の朝を迎える。
消灯は21時で、起床は6時とやたら早い。
6時になると、朝だぞ起きろよと放送が入る。
そんなもん無視して寝ていてもいいのだが、その放送後待ってましたとばかりに、天使がいろんな検査をしにくる。
手術から数日間は、定期的に天使が様子を見に来てくれていた。
もちろん夜中でも。
口から伸びている管に血が溜まるので、それを取り替えたり、尿道からの管の行き着く先にある、この世で最もどうでもいい液体が溜まるバケツを交換していたり。
もちろん、患者を起こさないように、小さな懐中電灯を片手に、隠密に行動してた。
俺が起きているときは、痛みはどうだとか熱はどうだとか気遣って、氷枕を交換してくれたりしてた。
熱が出まくっているので、氷枕は頭、アゴ、わきの下と合計4つがフル稼働。
熱は全然下がらなくて、効果があったのか無かったのか分からないけど、とてもナシではいられなかった。
それらをしょっちゅう交換してくれた。
これは大変ありがたかった。大変な仕事だな。
朝も早くから、血を取られたり点滴を換えたりと大忙し。
俺は寝てるような起きているような状態で、それらの作業をぼんやり眺める。
消灯は21時で、起床は6時とやたら早い。
6時になると、朝だぞ起きろよと放送が入る。
そんなもん無視して寝ていてもいいのだが、その放送後待ってましたとばかりに、天使がいろんな検査をしにくる。
手術から数日間は、定期的に天使が様子を見に来てくれていた。
もちろん夜中でも。
口から伸びている管に血が溜まるので、それを取り替えたり、尿道からの管の行き着く先にある、この世で最もどうでもいい液体が溜まるバケツを交換していたり。
もちろん、患者を起こさないように、小さな懐中電灯を片手に、隠密に行動してた。
俺が起きているときは、痛みはどうだとか熱はどうだとか気遣って、氷枕を交換してくれたりしてた。
熱が出まくっているので、氷枕は頭、アゴ、わきの下と合計4つがフル稼働。
熱は全然下がらなくて、効果があったのか無かったのか分からないけど、とてもナシではいられなかった。
それらをしょっちゅう交換してくれた。
これは大変ありがたかった。大変な仕事だな。
朝も早くから、血を取られたり点滴を換えたりと大忙し。
俺は寝てるような起きているような状態で、それらの作業をぼんやり眺める。
朝から、いよいよ食事がOKになる。
一日以上何も食ってないわけだが、腹が減ってるのか減ってないのかもよく分からない状態。
だけど、食事という響きにココロオドル。
食事といっても、もちろん常時歯を食いしばってる状態なので、まともなものは食べられない。
そこで登場するのが、流動食。
流動食って、管みてーなもんから口に流し込むのかと思っていたら、普通にパックのジュースみたいなのな。
こんなの。
味がいろいろあって、これはイチゴ味とコーヒー味。
あと抹茶とバニラがあった。
好きな味があったら、合わせられますので言ってくださいねーと、天使が言ってくれた。
わーいわーい食事だー。
ストローをブッ刺し、飲む!
俺は現在、歯を食いしばった状態なんだな。
しかもそれだけじゃなく、プレートみたいなのを噛み締めてるんだわ。
もちろん俺の歯型にあった形のプレートで、それで上下の歯の位置を固定してんだわ。
だから、食いしばってるだけなら、多少は歯の間に隙間もあるだろうけど、そのわずかな隙間をこのプレートがシャットアウトしてんのな。
ノートンもびっくりの、まさに水も漏らさぬセキュリティ。
そんな状態で、ストローで物を飲むということが、どれだけ大変か。
おめーら少しでも考えたことあんのか。俺は無いぞ。
ストローてね。
普通歯よりも後ろに持ってきますわな。
でも俺にはそれが出来ないから、歯に当てたような状態にするわけですよ。
そして唇の力を最大限に発揮して、とにかく吸い込む。
流動食ってドロっとしているから、必死に吸い込んでもなかなか上がってこないのな。
マックシェイクを吸う時って、思い切り吸い込んでも、なかなかありつけないやん?
そんな感じ。
そして上がってきたら、歯のわずかな隙間を探してそこから、ほんの少しずつコクコクと飲むの。
200mlなのに、飲みきるのに30分ぐらいかかるの。
加えて!
と ん で も な く マ ズ イ ん で す 。
いやね。
与えられた食い物に対して、文句言うなんて最低ですよ。人間のクズですよ。
おかんやばーちゃんに、食べ物を粗末にしてはいけないと、幼少の頃から鞭でしばかれながら教わったんです。
だから、これまで文句なんか言ったことありません。
たとえ、自称料理が得意とかいう彼女の手料理が、え?冗談?だよね?って真顔で言ってしまいそうなほどマズかった時も、
「いやーおいしいねぇ。前衛的で」
ぐらいで耐えましたよ。ちょっと目が潤んでましたけど。
ミソとケチャップを間違えたぐらいのレベルでマズかったんですけど、それでも文句は言いませんでしたよ。
味見は怖くてしてないとかゆーてました。武士の一分。
でもね。
この流動食だけはいただけない。
なにがマズいって、甘すぎるんです。
木に塗っておいたら、カブトムシとかいっぱい集まってきそうなレベルで甘いんです。
おそらく子供用にしてあるんでしょうけど、飲み物なのに胸焼けするぐらい甘いんです。
それでもまぁ、カロリー取らないとダメですからね。
これ200mlで200kcalあるんですよ。
これを1日9本。合計1800kcal採る必要があるんです。
基礎代謝にもよりますけど、確か成人が1日に最低限必要なカロリーは、女性で2200、男性で2400だったかと記憶してます。
まぁそれぐらい採っておけば、軽くやせる程度で済むというわけです。
カロリー採らないと、傷の治りも遅いとか言われたので、必死に飲みました。
だんだんと、食事の時間が憂鬱になって来ました。
というか、その日の夜にはもう憂鬱になってました。
それでも初日は、がんばって全部飲みました。
夜中中、吐き気に悩まされました。
俺は口が閉じているので、もしも吐いてしまったら、吐瀉物を外に出すすべがありません。
普通に窒息してしまいます。
だからもし吐きそうになったら、非常用のハサミで、口の紐を全部切るんだよと天使に言われました。
吐きそうになったら?
鏡とハサミを探してきて?
ハサミでこの無数にかけられているヒモを、パッチンパッチンと一本ずつ切って?
それでオエーってかー。ああなるほどーってバカ!
不可能もほどほどにしろ。
非常時にそんな冷静な行動が出来るんなら、彼女とケンカして、うるせーもう帰るよ!って飛び出して駅まで行ったら財布置いてきたことに気づいたりせんわ。
朝までモンモンと、吐いたらどうしよう吐いたらどうしようって考え続けながら、自分の体と会話してました。
ちなみにこの夜から、病室に1人おじーさんが入りました。
どうやら休日は家に帰る様子で、平日はここに入院しているみたいです。
あのさ。
不思議なんだけど、なんでオッサン以上の歳くった男って、ほぼ100パーの確率でイビキかくんだろな。
もちろん俺も含めてなんだけどさ。
そのじーさんのイビキがまたすげーの。
どうやら喉が悪いらしくて、強烈なイビキが、だんだんと弱くなっていくのな。デクレッシェンドなんだわ。
そしてとうとう、ピタリと止むの。
妙に静かになって、遠くのほうで心拍を示す、ピッ、ピッって音が聞こえたりするほど、静かになるの。
もしかしてじーさん...と心配になったところで、
ゲホンゲホンと、たんが絡んだせきをしまくった後で、ズゴゴゴゴーってジョジョみてーないびきになるの。
それの繰り返し。
もう止まるたびに、がんばれ止まるなとエール送ったわ。
むしろイビキが聞こえているほうが安心する。
遠くのほうでは子供が痛い痛いって泣いてるし。
やっぱここは病院なんだよな。
みんな、早く元気になってくれ。
全然眠れないので、ボケーっとそんなことを考えながら、ひたすら朝を待つ。
夜は長い。
一日以上何も食ってないわけだが、腹が減ってるのか減ってないのかもよく分からない状態。
だけど、食事という響きにココロオドル。
食事といっても、もちろん常時歯を食いしばってる状態なので、まともなものは食べられない。
そこで登場するのが、流動食。
流動食って、管みてーなもんから口に流し込むのかと思っていたら、普通にパックのジュースみたいなのな。
こんなの。
味がいろいろあって、これはイチゴ味とコーヒー味。
あと抹茶とバニラがあった。
好きな味があったら、合わせられますので言ってくださいねーと、天使が言ってくれた。
わーいわーい食事だー。
ストローをブッ刺し、飲む!
俺は現在、歯を食いしばった状態なんだな。
しかもそれだけじゃなく、プレートみたいなのを噛み締めてるんだわ。
もちろん俺の歯型にあった形のプレートで、それで上下の歯の位置を固定してんだわ。
だから、食いしばってるだけなら、多少は歯の間に隙間もあるだろうけど、そのわずかな隙間をこのプレートがシャットアウトしてんのな。
ノートンもびっくりの、まさに水も漏らさぬセキュリティ。
そんな状態で、ストローで物を飲むということが、どれだけ大変か。
おめーら少しでも考えたことあんのか。俺は無いぞ。
ストローてね。
普通歯よりも後ろに持ってきますわな。
でも俺にはそれが出来ないから、歯に当てたような状態にするわけですよ。
そして唇の力を最大限に発揮して、とにかく吸い込む。
流動食ってドロっとしているから、必死に吸い込んでもなかなか上がってこないのな。
マックシェイクを吸う時って、思い切り吸い込んでも、なかなかありつけないやん?
そんな感じ。
そして上がってきたら、歯のわずかな隙間を探してそこから、ほんの少しずつコクコクと飲むの。
200mlなのに、飲みきるのに30分ぐらいかかるの。
加えて!
と ん で も な く マ ズ イ ん で す 。
いやね。
与えられた食い物に対して、文句言うなんて最低ですよ。人間のクズですよ。
おかんやばーちゃんに、食べ物を粗末にしてはいけないと、幼少の頃から鞭でしばかれながら教わったんです。
だから、これまで文句なんか言ったことありません。
たとえ、自称料理が得意とかいう彼女の手料理が、え?冗談?だよね?って真顔で言ってしまいそうなほどマズかった時も、
「いやーおいしいねぇ。前衛的で」
ぐらいで耐えましたよ。ちょっと目が潤んでましたけど。
ミソとケチャップを間違えたぐらいのレベルでマズかったんですけど、それでも文句は言いませんでしたよ。
味見は怖くてしてないとかゆーてました。武士の一分。
でもね。
この流動食だけはいただけない。
なにがマズいって、甘すぎるんです。
木に塗っておいたら、カブトムシとかいっぱい集まってきそうなレベルで甘いんです。
おそらく子供用にしてあるんでしょうけど、飲み物なのに胸焼けするぐらい甘いんです。
それでもまぁ、カロリー取らないとダメですからね。
これ200mlで200kcalあるんですよ。
これを1日9本。合計1800kcal採る必要があるんです。
基礎代謝にもよりますけど、確か成人が1日に最低限必要なカロリーは、女性で2200、男性で2400だったかと記憶してます。
まぁそれぐらい採っておけば、軽くやせる程度で済むというわけです。
カロリー採らないと、傷の治りも遅いとか言われたので、必死に飲みました。
だんだんと、食事の時間が憂鬱になって来ました。
というか、その日の夜にはもう憂鬱になってました。
それでも初日は、がんばって全部飲みました。
夜中中、吐き気に悩まされました。
俺は口が閉じているので、もしも吐いてしまったら、吐瀉物を外に出すすべがありません。
普通に窒息してしまいます。
だからもし吐きそうになったら、非常用のハサミで、口の紐を全部切るんだよと天使に言われました。
吐きそうになったら?
鏡とハサミを探してきて?
ハサミでこの無数にかけられているヒモを、パッチンパッチンと一本ずつ切って?
それでオエーってかー。ああなるほどーってバカ!
不可能もほどほどにしろ。
非常時にそんな冷静な行動が出来るんなら、彼女とケンカして、うるせーもう帰るよ!って飛び出して駅まで行ったら財布置いてきたことに気づいたりせんわ。
朝までモンモンと、吐いたらどうしよう吐いたらどうしようって考え続けながら、自分の体と会話してました。
ちなみにこの夜から、病室に1人おじーさんが入りました。
どうやら休日は家に帰る様子で、平日はここに入院しているみたいです。
あのさ。
不思議なんだけど、なんでオッサン以上の歳くった男って、ほぼ100パーの確率でイビキかくんだろな。
もちろん俺も含めてなんだけどさ。
そのじーさんのイビキがまたすげーの。
どうやら喉が悪いらしくて、強烈なイビキが、だんだんと弱くなっていくのな。デクレッシェンドなんだわ。
そしてとうとう、ピタリと止むの。
妙に静かになって、遠くのほうで心拍を示す、ピッ、ピッって音が聞こえたりするほど、静かになるの。
もしかしてじーさん...と心配になったところで、
ゲホンゲホンと、たんが絡んだせきをしまくった後で、ズゴゴゴゴーってジョジョみてーないびきになるの。
それの繰り返し。
もう止まるたびに、がんばれ止まるなとエール送ったわ。
むしろイビキが聞こえているほうが安心する。
遠くのほうでは子供が痛い痛いって泣いてるし。
やっぱここは病院なんだよな。
みんな、早く元気になってくれ。
全然眠れないので、ボケーっとそんなことを考えながら、ひたすら朝を待つ。
夜は長い。
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