俺のおみや

俺は、もうかれこれ５年以上は、会社で昼を食ったことがありません。
昼飯を食わない、と言うとたいていの人は驚かれますが、目線がツツツと下にさがり、俺の発泡酒ッ腹を見て、ああ、さもありなん、そもさん、せっぱ、と納得されます。

違うんだよー。確かにおなかはすんげー自己主張してっけど、ダイエットのためじゃないんだよー。ホントだよー。本当に狼が来たんだよー。

ダイエットのためでないなら、いったい全体それはなぜか。

実は、何かを食べるってのは、実はストレスの発散になるんですよね。
雪山とか瓦礫の中に閉じ込められた人が、何かを食べることで生きながらえたというのは、栄養面という意味ももちろんありますが、実はそのような危機的状況の中、精神が参ってしまう事を、何かを食べることでストレスを解消し耐えることができた、という意味も大いにあるんですよね。
とらないよりは、とったほうがいいということは分かってるんです。
３食ちゃんと食べている人のほうが、俺が毎年健康診断でその疑いをかけられてる、糖尿病にもなりにくいですし。

まぁ弁当作るのが面倒とか、結構バカにならない昼飯代が浮くとかいう理由もありますが、一番の理由はほかにあります。

話ちょっとそれるんですが、俺ってものすごく１人好きなんです。
でも今の社会って、基本的に１人好きを容認しないじゃないですか。
まったく理解が無いってわけじゃなくて、団体を好む人が多いじゃないですか。
ほとんどすべての場合において、

大人数　＞　１人

という関係があると思うんですよね。

たとえば一人旅。
俺はパリに１人で行って、飛行機とかホテルの手配とかもやって、俺にしてみれば大冒険！って感じでムチャクチャ楽しかったんです。
時間の限り、何をするのも自由。
困るのも楽しむのも、すべて自分の行動次第。
搭乗手続きの仕方とかよく分からなくて、ほったらかしたまま、出発３０分前に事実に気づいて、泣きながら空港の人にわけを話してつれてってもらって、荷物検査とかむちゃくちゃ並んでいたのに、すんごい割り込んで入らせてもらって、その後はゲート目指してヒースロー空港を全力疾走したこととか。
ホテルの位置が分からず、道行く人に英語でホテルの場所を聞いても「しらん」と、そっけなく言われたり。
機内で陽気なスコットランド人に話しかけられ、なぜか日本料理の話で盛り上がったりとか。

１人じゃなかったら、困ったときに相談できたり、１人じゃ怖気づいて入れない場所とかも、入れたりしますよね。
でも、１人なら１人で、自分のことしか考えなくて済んだり、気軽に予定を変えられたりと、いいところはいっぱいあるんですよね。

複数も楽しいけど、１人も楽しい。
どちらかというと、１人が好き。
そんな考えがあっても良いと思うんですよ。

でも、世間的には、そーでもないですよね。
特に女子なんかは、どこかに行ったって言うと、まず最初に「誰と？」って言われたりすることが多いです。
そこで「１人」というと、やれ寂しいとか１人とかありえないとか、顔がキモイとか言われるんですよね。
最後のは関係ないやん。普通に悪口やん。俺かて泣いてしまうで。

かつては俺もそうだった。
１人で映画とか、１人で旅行とか、意味が分からんかった。
そういう１人行動派の女友達がいて、そういうの聞くたびに
「誘ってくれたら行ったのに」
とか言う俺がいた。下心丸出しで。
違うんだよ俺。
１人のほうが良い場合もあるんだよ。
でもあのころは、そんなこと知りもしなかった。

ある時、あまりにも１人で何もできない俺に、その人からなんかの弾みで言われたんです。
１人を楽しめないとか、誰かが一緒にいないと楽しめないなんてのはダメ、みたいな事を。
もうね、目からウロコ。ウロコどころかヒレとかエラとか、いろんなものが零れ落ちた。
そこら辺から、友達が少ないくせに行動派なのが災いして、１人での旅行とかツーリングとか多くなって、いつのまにかその味をしめちまって現在に至る。

ほいで話を戻しますが。
要は、休みの時間まで大人数が集まるところで、食事したくないってところなんです。
休みの時間は、コミュニケーションのアンテナを全部ＯＦＦにして、心を休めたいんです。
１人の時間が絶対必要なんです。
人がいっぱいいたら、それができない。
昼を食べるなら１人で。欲を言えば、天気のいい日は川のそばにでも座って、お弁当を食べたりしたいです。

でも前記のとおり、そういうのってあんまり推奨されないじゃないですか。
１人で食べたりしていると、
「一緒に食べようぜ！来いよ！」
と、ひどく勘違いしたボランティア精神で、誘われたりするじゃないですか。
違うんだよー。俺は１人のほうがいいんだよー。分かってくれよー。

最近発見した法則なんですけど、女性も３０過ぎると、１人行動派が増えますよね。
理由はまぁいろいろあると思いますが。
そこらへんも、俺が年上好きな理由かもしれません。