幼馴染が女の子でしてね。
同い年で、幼少の頃はよく遊んでました。
さすがに幼すぎてあんまり記憶は無いんですが、保育園の行き帰りとかに、仲良く手を繋いで歩いて帰ったような記憶も有ります。あと一緒にミンキーモモとか、ときめきトゥナイトとか見てた。
あと残ってる記憶といえば、彼女が、花の蜜の吸い方を教えてくれましてね。
花の蜜は結構甘くて、当時はおいしいと感じてまして、通り道にある小さな花をいくつか取っては、蜜を吸い尽くしていました。俺らの通った後には、ぺんぺん草も生えやしねぇ。
付近のモンシロチョウをはじめとする蜜吸い本職の方々には、随分ご迷惑をおかけしたかと思います。
俺の誕生日が来まして。うちでお誕生会をやることになったんです。主におかんの一存で。
正直、気恥ずかしかったんですけど、何故かおかんはやる気満々。
その幼馴染の子、まぁAちゃんとしましょうか、彼女を招待しろと言いましてね。
招待状みたいなものを作らされたんですよ。
招待状といっても、宝くじみたいなペラペラ紙一枚の、しょぼいものです。
とにかく、幼馴染とは言え、女の子を誕生会に招待するなんて、むちゃくちゃ恥ずかしくてね。
そんなもん直接手渡すなんて、絶対出来んわけですよ。
彼女の家の前まで行ったはいいんですけど、家の前を行ったり来たり、ウロウロウロウロ。
不審人物も良いところ。
当時は一桁歳だったからいいようなものの、あと20ぐらい歳食ってからやったら、確実に通報されてますよ。
恥ずかしい。
けど渡さずに帰ったら、確実におかんに、必殺のシャイニングウイザード喰らわされる。
帰りたい。けどああ帰れない。
行くも地獄、帰るも地獄。
この世はままならんものだと、俺は5歳ぐらいにして悟った。
今思えば、大体正解かと。
そこで俺は招待状を、彼女の家の庭の茂みにそっと置き、逃げ帰るように家に帰った。
あんなところに置いては、気づくはずが無い。
きっと彼女は来ないだろう。
おかんはキレるだろうけど、まぁ機嫌が良かったら5,6発でカンベンしてくれるだろう。
しかし彼女は来た。
そして、ささやかながら楽しい誕生会をやった。
みんなで、おかんの作ったケーキ食べて、プレゼントとかもらったりして。
一体、どうして彼女は来てくれたんだろう?
数日後に、その疑問は氷解する。
なんとあの日、おかんは俺が家に帰ってきてから、本当に渡したか確認しに行ったらしい。
そして茂みに置かれた招待状を目ざとく見つけ、郵便受けに入れたとか。
わが子を信用しない親なんて!
そのおかげでここまで大きくなれましたありがとうおかあさん、でもごめんね嫁は諦めて。
彼女とは中学まで同じだったけど、小学校に入ってからは遊ぶこともなくなり、いつの間にか家ごとどっか行ってた。
幼馴染が女の子でも、別段どーとゆーことは無いかと。
ドラマとかではよくある組み合わせですが、まぁ現実はこんなもんですな。