俺のおみや

映画を見た。
その映画で筋肉ムキムキの主人公は、トレーニングとして握り拳で中指だけを着けて、
腕立て伏せをしてた。拳立てふせとでもいうのか。

感化されやすい俺は、単純にスゲーと思いましてね。
あんなので鍛えたら、とんでもない握力になるんじゃねーかと。

そして、俺もやってみようと思ったんです。

映画では簡単そーにやってたし、俺も出来ると思ったんですけど、余裕で出来ない。
ってか拳壊れる。

そこでランクを落とし、入門編として指立てふせにしたんです。ランク落とすのは超得意。
5本の指をパーして広げて、指立てふせです。
これなら出来るだろう、と。

でも、これすら出来なかった。
1回出来る出来ないとかいうレベルじゃなく、そもそも指だけでは、メタボな体を支えられない。
どーなってんだ。
1回も出来なかったら、徐々にレベルアップしていく計画が、即座に破綻するやんけ。

それでもムキになっちゃいましてね。
なんとか出来ないものかと試行錯誤の結果、おなかを着けた状態、というかおなかを軸にした状態なら、
簡単に出来ることに気がついたんです。
当たり前のことなんですがね。
こんなんやったら、オットセイでも出来るわ。

まぁ初日はこの辺で勘弁してやろうかと、泣きながら思ったんです。人間としての尊厳を想って。

そして次の日も次の日もとやっていくと、ついに何日か目で、体を数秒、支えることが出来たんです！
もう指プルプルでしたけど、成長したことにいたく感動しましてね。
日々成長していくのが楽しくて、それから毎日のようにやってたんです。

そしてとうとう、5回ほど指立てふせが出来るようになったんです。

もうこの成果を、誰かに言いたくてしょーがなくてですね。
伴走仲間に、指立てふせを何回できるかって話を振ってみたんです。
俺は10回（サバ含む）出来るぞって自慢の言葉を懐に忍ばせてね。

そしたら奴め
「朝夕に20回ずつやってるけど、結構しんどいから、50回は無理だと思う」
思うな。
とりあえず否定したったけど、50回て。
俺は喉まで出かかった10回（サバ含む）のセリフを飲み込み、
へーそうなんだぁあははこれからもがんばってくださいと、自分でふった話題なのに、鮮やかにスルーした。

負けないっ！
「まぁ100回やれば、けっこうしんどいかなぁ」
とかゆーたるから！おのれみておれよ。

指立てふせは、弦を押さえるのも楽になるらしいよ。
コントラバスの人がゆーてたんですがね。