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2024/11/23 00:06 |
手話 3

そしていよいよ、今の会社から
『もうアンタ要らん』宣言を喰らい、俺はこの会社からしっぽを巻いて逃げ出すこととなった。

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ああ..とうとう俺の手話は使われることがないまま、終わってしまうのか..
まさか、今の仕事とは全然関係ないのに、役付きのあの人のトコロに行って、いきなり手話を繰り出してみるのも、さすがに不自然すぎる。
燃えろプロ野球で、ホームラン打たれたピッチャーのように嘆いていた俺の足りない頭に、ぴーんと名案が浮かんだ。

そうだ、退社と言えば挨拶周りではないか!
お世話になったあの人に、挨拶に行くのはちっとも不自然ではない。
俺は早速家に帰ってから、別れの挨拶を示す手話を本で調べた。

俺の持ってる本だけでは、かなり語彙が少ない。
これでは、俺の思うままの言葉は表現できそうにないけど、とりあえず必要最低限のことだけでも覚えよう。
これが手話で言えて、しかも通じたらと思うと、ワクワクとヨダレが止まりませぬ。
俺は活動限界時間の0時を回っても、必死に手話の本を見ながら、薄暗い部屋の片隅で、手をあっちゃこっちゃに動かしつつ、明日のことを思ってやばい笑みを浮かべながら、必死に練習した。

最後の日。
とりあえず仕事も無事に終わり、提示前から挨拶周りを始めた。
そしていよいよあの人への挨拶である。
ドキドキドキ。
生まれて初めての、手話体験である。
ええと、あれがこれでそれがあれでああなってこれはつまり4ミリバールだな、と復習し、彼の肩をポンポンと叩いた。
彼を呼ぶときは、呼びかけず、こうしてみんな呼んでいる。
彼は仕事の手を止め、俺の方を向いた。
ドキドキドキ。さぁ行くぞ~

自分を指さしながら「わたしは」
両手の平を下に向けて、軽く上下「今日」
両手の人差し指と中指を立て、顔の横で互い違いに前後「会社を」
(これはわからんかったから手話無し)「辞めます」
彼の顔がぱっと驚きの顔を作り、ゆっくりとした手話で
「手話が出来るの?」と聞いてきた。
俺はあわてて、人差し指と親指の先をつけ、はじくように親指をはねあげ「少し」と言った。

通じた!
その後彼は、「次はドコの会社へ行くの?」と聞いてきた。

俺がそれ以上ほとんど手話を知らないと言うことはバレバレだったようで、すぐに彼は筆談と読唇で、俺との会話を進めてくれた。

しっかりと励まして貰って、また仕事を一緒にすることになったら、手話も教えて下さいね、ってな事を話して別れた。

こうして俺の手話デビューは、比較的成功な気分で幕を閉じた。
楽しかったー

2007/10/14 00:40 | Comments(0) | TrackBack() | 日常

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