前回の話の続きです。
猟奇的な彼女
そして、生傷の絶えない日々が続きました。
もう仲間内でも彼女の奇抜な行動は有名で、真剣に俺の身を案じる友人から
「アンタありゃ止めたほうがいいんじゃないの?」
と、何度も忠告されてました。
しかし当時の俺は、今と変わらずすこぶるバカで、
「男は、思い立ったら最後まで!死が2人を分かつまで!」
みたいな気概があり、バカに勘違いが加わるとろくなモンじゃねーな、という良い見本でした。
あと、1人になるのが怖かった。それが本音。とんでもない女だけれど、ひとりぼっちよりマシだよ。
そして終焉の日がやってきます。
本当はこの前に、でっかい事件があったんだけど、これはさすがに書けない。
これは一般社会にもご迷惑をおかけした事件で、多分偶然現場に居合わせた人たちは、
一生忘れられないような経験になってるはずなので、友人達におもしろ可笑しく話す事は出来るけど、
さすがにWWWでは書けません。
それぐらいすんげー事件でした。死傷者は出てないけど。
ある日突然、前回の般若への変化のように、なんの気配もなくある日ぽつりと
「別れよー」
と言われました。
ものすげー驚きました。全然そんな要素が見つからなかったんです。
まぁ別れってのはそう言うもんですが、俺はとにかく、今まで通りでやっていきたかったんです。
別れたくない俺はすがりつきまくり、娘をお代官に取られまいと足にすがりつく父Aぐらいのレベルで、
主に泣き落としで攻めまくってた。
それでも彼女はやんわりと
「これ以上一緒にいたら、2人ともダメになると思うんだー」
とか
「たからはいい人だから、きっとすぐに彼女できるよー」
とか、遠い目をしながら言うんです。おめーそれ絶対本音じゃねーだろ。
明らかに、傷つけないことで傷つかず、綺麗に別れようという方向に出てます。
納得がいかない俺はもう、食い下がりまくった。
何でなの?とにかく理由を、と言う至極まっとうな俺の質問に対して、
「きっといいひとみつかるよー」
と、語尾を伸ばしながらのんびり優しく言うんです。全然会話になってねぇ。
大体10分は、そんな不毛な会話が続いたでしょうか。
俺はかねてより、これだけは言いたくないけど、言うしかないと思って聞いてみた。
「ひょっとして、ヨシアキ?」
ヨシアキってのは、サッカー部の超イケメン。病的にモテモテ。
実は1月ほど前から、浮気されてる情報は耳に入ってきていた。
だけど、既に書いた通り俺は無駄に男気にあふれていたので、
「恋人を疑うなんて、そんな事は出来ない!それは俺が死ぬ時だ!」
と、聞こえないフリをしていた。それがかっこいいとか勘違いしてた。病気でした。
ズバリ核心をついたと思ったのに、彼女は眉ひとつ動かさずに
「違うよー」
おお、会話が成立してる。
何度聞いても、それは「違う」と答えてくれた。
それ以外に考えられなかったので、とにかく聞き出そうと必死。
去り際全く分かってない。空気読めてない。
だったらどうして?ねぇ?ねぇねぇねぇねぇ?ねぇねぇ?ねぇねぇ?ねぇねぇ?ねぇねぇ?
あまりの俺のしつこさに、さすがに彼女もイライラしてきた様子。
せっかく綺麗に別れようとしてやってるのに、この男ぁ!という怒りに満ちてきたのを、
3ヶ月の付き合いで身につけたセンサーで、しっかりと感じ取った。
そして頂点に達した彼女は、見慣れたブチ切れ顔で言い放った。
「だってヨシアキくんの方がかっこえーねんもん!」
やっぱりか貴様ー!!
こうして、3ヶ月の俺にとっては長い方の付き合いは、静かに幕を閉じる。