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2024/11/23 05:59 |
究極のパンチ

ボクシングやってた頃の話。

「やっぱボクシングといえば必殺パンチでしょう」

ジム仲間とそんな話になったとき、最年長のメンバーつよしくんが深刻な顔をして
「実は..」
と切り出した。

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聞くところによると、実はこのジムには一子相伝の究極のパンチが代々受け継がれているらしい。

そのパンチとは、当てずとも敵を倒すという、それはそれは強力なパンチらしい。
そのパンチを、今から披露してくれるとの事。

それは一体..
固唾を呑んでみんなで見守る中、つよしくんはジムの奥から、見慣れない古びたグローブを引っ張り出してきた。
ヘッドギアを着けて、誰か相手をしろという。

メンバーの中で一番タフな仲間みちるくんが、リングに上がった。

ドキドキドキ。
究極のパンチとは、一体どんなパンチなんだ?
触れずに倒すって、まさか気とか使うのか?つよしくんにそんな事が..

適当に、究極パンチのエキシビジョンが始まった。

にじりよるつよしくん。
究極パンチを警戒し、後退するみちるくん。
あっという間にコーナーに追い詰められる。
いよいよかっ!!

つよしくん「くらえっ!究極のパンチ!名づけて..つよし拳!」
ダサッ!究極に名前ダサッ!
絶対、今適当に考えた名前やろそれ。発表までに、おもくそ間があったやんけ。

みちるくんはしっかりとつよし拳をガードする。
つよしくんは構わずガードの上から、何発もパンチを打ち続ける。
その度毎に「つよし拳!つよし拳!」と技の名前を連呼する姿は、とても妻子には見せられないダサさ。

しかし、あれが究極のパンチか?
見た目には全然凄くない、ごく普通のパンチに見えるが..
しかも明らかに手を抜いた、力の無いパンチだ。
あんなもんで、みちるくんがダメージを負うはずは..

と、俺たちがひそひそしだしたその時!

「グガッ!!」
一声、みちるくんが叫んだかと思うと、全てを悟ったような表情で、その場に崩れ落ちた。

おおっ!
どよめく俺たち。

「これがつよし拳だ!」
あくまでも最後までダサい、つよしくん。
まだ言うかつよし拳て。
そもそも一子相伝の究極パンチの名前に、個人名が入ってるのはどうかと。

俺たちが、眠れるように倒れるみちるくんに駆け寄ったその時、

「くっ、臭っ!」
あたりに漂う、あまりの悪臭にのけぞった。
ま、まさか究極のパンチの正体とは..

一体いつから存在するのかわからない、超古いグローブ。
歴戦の選手たちの汗と涙を吸い続けたグローブ。
結果、十分テロ活動に使えるほどの、強力な臭気を放つ兵器となってしまった。
こっ..これが、触れずに敵を倒す、究極のパンチの正体なのか。

つよしくんが言うには、このパンチには様々な利点がある。
いくら鍛えていようとも、絶える事は不可能。
そして習得に、努力が不要。
ただし、これを着けるとむこう1週間は、自らの悪臭に悩まされるという諸刃の剣。
何食っても納豆食ってるみたいな感覚になる。
素人にはオススメできない。
と語った。

伝承者にだけは成りたくありません。

2007/06/01 12:42 | Comments(0) | TrackBack() | スポーツ

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