これまでのあらすじ。
だって手術こわいもん。
逃げてばかりいては強くなれないぞ。
だって..
じゃあこうしよう、明日の試合で僕がホームランを打てたら、
スプリント調整を中退した俺。
治療は諦めたが、また文字通り開いた口がふさがらんくなったら困るので、
歯医者の言いつけは守って、いい子にしてた。
話飛ぶんですけど、ウチの一族って、俺を含めて人としてどうかという連中が多いんです。
その中に1人だけ、一族全員の人間らしい部分を根こそぎ抽出してできあがったかのような、
とっても素敵な女性がいるんです。
俺の叔母さんにあたる人で、いつもニコニコしてて、天使のように優しい声の人なんです。
その人がある日、俺に電話でこう言ったんです。
「たかちゃん、私お願いがあるの」
「たかちゃん、生まれた頃はとっても可愛かった」
「でもこの間(遠い親戚の葬式で20年ぶりぐらいに会った)たかちゃんに会って、驚いたの」
「そのアゴのせいで、すっごく醜くなったじゃない?」
.....いや、俺ってこの世に生を受けてから現在に至るまで、ものすごくけなされて生きてきた。
だからけなされた場合のリアクションも、たぶん謙遜しても宇宙一だと思うんだ。
しかしそんなけなされプロ、これで飯食って早50年の俺でも、この一言は何も言えなかった。
私にはスタートだったのあなたにはゴールでも。何も言えなくて夏。冬だけど。
うん、いいひとなんよホントに。
でも、歯に衣着せないって言うか、それだけは言ってはいかんでしょうってな事平気で言うっていうか、
一生に一度言うかどうかってな殺戮言葉を、惜しげもなく次々とイチローも打てやしねぇ剛速球なんです。
その後「醜い」と言う発言を薄めるかのように「昔は可愛かった」って事を20回ぐらいおっしゃってました。
確かに昔の俺は可愛いよ。
ほれ。可愛かろ?
でもそれは言い過ぎ。天使のような声して「醜い」は言い過ぎ。
確かに今の俺は醜いよ。
うん、それは認める。自信を持ってオススメできる。誰が否定しても俺が認める。
でもね、こんな俺でも生きてるの。頑張ってるの。
本当に頑張ってる人に比べたら、俺なんか大したこと無いけど、それでも凡人なりに歯を食いしばって生きてんだ。
そんな俺に、たとえ正しい評価でも下してはならない時がある。つむいではならない命がある。終わりにしようスネーク。
うん、俺はそんな風に思うんだ。
叔母さんは、顎関節症についてずいぶん調べてくれたらしい。
実際に医者にも話を聞いたらしく、かなり詳しかった。
その後、お金を出すからお願いだから手術を受けて、あの頃の可愛いアゴを取り戻して、
という涙ながらのお願いを受け、俺は一刻も早く氏にたかったです。
おまけにその後、さらなる懇願が成されている、直筆の手紙までいただいた。
もう直訴状って感じです。
確かに、顔変わるんだよね。手術受けると。
前に大学病院で、手術前後の写真を見せて貰ったんだけど、
明らかに違うねん。全体的にすっきりとした顔に変わるんですわ。
程度の差はあれど少なくとも、悪くなってる人は皆無だった。
でもまぁ、これはタダの手術の結果で、美容整形じゃないんだから
叔母さんが望むような劇的な変化は、もう首から上をイケメンととっかえっこするしか無いと思われ。
それでもまぁ、良くも悪くもそこまで言ってくれる人がいるのなら、話進めてみますかと、
餅を田んぼ4面分ぐらいは食った正月明けで、物理的にも重い腰を上げ、再び大学病院へ。
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