な、なんだってーってな驚きのリアクションを期待していたのに、
「そんなこと、とっくに分かっとったわ」
バレてたん!?
俺が保育園のあかずきん劇で「木2」として発揮したこの演技力が、まったく通用していなかったとは。
上司は続ける。
「でもなぁ。出来る事でも、自身の無さから出来ないと言う奴はいるが、出来ない事を出来ると言い切る奴は、なかなかいないわな」
....褒められてるのか貶されてるのかわからんので、黙って話を聞く。
「それでも、これまでやってきたやんけ。オマエは嘘を本当に変えて来たんやないんか。これはそうそう出来る事やないで」
...あれ?もしかして勘違い続行されちゃってる?俺、褒められてる?
「俺らみたいな技術者は、出来ない言うたらそこで終わり。出来ないのなら、どうしたら出来るか考える事が必要や。オマエの努力はそのひとつの答えちゃうか」
もうね。別の種類で泣けたわ。
分かってもらえた。自分を否定されんかった。
俺は決めた。この人についてって、技術とその思考をもらいまくると。
この日からも、相変わらず俺は無能で散々怒られて、散々泣いてた。
でも1年経って、俺は1年前とは比較にならんくらいの実力と、それに伴う自信をもった。実力はそれでも並以下なんですが。自信は並以上。世界ランク。
結局、最後までこのプロジェクトに残ったのは俺とその上司、あと1人の戦士だけだった。
他はみんな、逃げたか入院か。
この会社自体は、社長がちょっとアレで、新聞の1面にのった(執行猶予)り、なんか毎年、わけのわからん会社と合併を繰り返したり、支社長が就任後1年で退職したり。
毎年100人単位の社員が入社するのに、期末には社員がそもそも100人もいないとか、なかなか香ばしい会社であった。
見るからにタイタニック。いつ沈んでもおかしくない沈没船。
給料もびっくりするぐらい安いしね。
でも上司がいるし..まだまだあの人の下で働きたい。
そー思って、俺はこの会社に残り続けた。
沈没しながらも、演奏を続けてた。
その上司も、あるときスパッと辞めた。
1年後俺は、とある会社に出向していた。
そのまた2年後、この会社から引き抜きの話を受け、沈没船から降りてここの社員となる。
そこの面談で出会った取締役に、
「開始1分で、こいつ絶対引き抜いたろと決めた」
という、およそ仕事が出来るとかそういう方面が有りえない様な、奇妙なコメントを後にいただく。
かの上司とは、今でも集まって酒を飲む仲。
俺の引き抜きが決まった時、一番喜んでくれたのはこの人でした。
この人のおかげで、俺は自分にも誇れるものがやっと出来た。
あなたのおかげで、俺は今日も元気にハッタリかましてます。
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コメント
見てる人は見てるんだね~^^
良い上司に恵まれたのは幸せだと思います。
たからさんは自分を追い込んで実力をつけていくタイプなんやなぁ。
時間かかっても出来るように努力できる人は尊敬します!
今どきは不言不実行な人が多いと思うから。(私もそうだな^^;)
どんどんハッタリかましてレベルUPしてくださいね!(^_-)-☆
多感謝♪
今日の昼休み、ばよら~に変身してたら同僚が、
「やっと完結したよ♪」って。
・・・私より先に読んで、楽しんでたのね~、やるじゃん!
素敵なお話じゃないですか!
私は
>出来ない言うたらそこで終わり。
>出来ないのなら、どうしたら出来るか考える事が必要や。
この言葉にじ~んと来ました。
「難しい話、せんといてや」
「え~、出来ませ~~ん」
が標準回答の私には、ものすごく輝いて見えました。
勿論、真似は「出来ません」。
でも、真似だけでもしてみたいと思った、今日なのでした。