やっぱね。そろそろいい加減やんなきゃならないくさい。
顎関節症の治療。
顎関節症と言っても「ああアレね」と分かる人は少数派、少なくとも半分以上の人は分からないと思う。
そんなメジャーな症状じゃない、と、思う。
説明はめんどうなのでWikipediaにお任せ。
俺は、もう29年間このカクカク言うナウいアゴと付き合ってきた。
そりゃあもう、密な深いお付き合いをさせていただきたてまつり上げました。
飯を食うときカコカコ鳴るから、同僚友達恋人知人ありとあらゆる飯仲間に驚かれてきた。
でも「いつもフランスパン食ってる」とか「アゴでタイタニック沈める男」とか色々言われて、
顔で笑いが取れるなんて、おいしいとか思っていたから、
治す気なんて、さらさなかった。
そもそも、自分のこのおいしいアゴが、実は病気だなんてみじんも知らなかった。
確かにあくびしたらアゴ外れそうになるし、すんげー痛いし、
口なんか全力で開けても指が2本縦に入るかどうか。
ものすげーおちょぼ口。どんなけ大和撫子やねん、ってな話ですよ。
でも、そう言うモンだと。これは個性なんだと。
いいじゃない、にんげんだもの。そんな風に思っていた。
話思いっきり飛ぶんですけど、かつてアマチュアボクシングをやっていた時があったんです。
俺はジムで一番デブ重かったし、階級2つとか3つ下の相手とスパーリングとかしてたんです。
基本的に体重が重ければ、それだけ有利なんで、俺圧倒的有利の、ものすごいハンデ戦だったんです。
それでも一番弱かった。掛け値成しに弱かった。
相手のパンチを、余すところ無く受け止めてた。顔面で。
あなたのパンチ、ひとつたりとも無駄にはしないわ!という勢いで、全部貰ってた。
1ラウンド3分やっただけで、俺の顔ボコボコ。普段の1.0倍ぐらいボコボコ見るも無惨。アクション映画終了20分前の主演ニコラス・ケイジぐらいボコボコ。
この経験により、俺のアゴは確実に悪くなったんです。あと性格とか頭も顔も悪くなった。劇的に。1.025倍ぐらいに。
なんかね。あくびしたら下の口が戻ってこなくなったの。
もうびっくりしてね。あわてて下から押し上げるんですけど、ガッチリアリコの入院保険って感じで、
アゴの野郎、全然ピクリとも、うごかざること山のごとしなんですよ。
それがしかも乗車率80パーぐらいの電車内ですよ。
もうパニックですよ。
涙もポロポロ、おもひでポロポロ、マルコポーロ。
当然ジタバタしてるもんで、周りも不審者に気が付いて「ちょっとあの人..」と後ろ指グサグサ指されまくり。
そしていよいよ、俺の顔ぐらい汚い話ですけど、開いた口からヨダレとか出そうになってね、
もうそれだけは、人としていや人未満ですけど生物として、それだけはやってはならんと本能が言いましてね、
即グーパンですよ。
自分のアゴに鉄拳制裁。
ボクサー時代にも打ったこと無いぐらいの強烈なアッパーを叩き込みましたよ。我顎に。
そしたら「ガチン!」とすんごい音がしてですね、なんとか口は閉じることに成功したんですけど、
もう耳のあたりの、おそらく下顎を支えてるホネが、痛くて痛くていてもたってもいられんくなったんです。
いきなり自分のアゴに、腰をひねり込んだ奇跡のアッパー叩き込んだ男を見て、
さっきまでうるさかった電車内は、水を打ったようにシーンと静まり返ってましたよ。
さすがにこれはないわー。
アゴ吉とかしゃくれビームとか呼ばれるのはおいしいけど、
自分のアゴにガゼルパンチはやりすぎ。
次いつまた閉まらなくなって、自爆パンチドランカーなったら目もあてられん。まだ試合したことすらないのに。
こーして歯医者に行って、自分が顎関節症であるという事実を知ったわけです。
んで、レントゲンとか色々撮ってもらって、治療に当たって2つの選択肢が出てきました。
1つ目は、完治させる方向。
当然これが理想なんだけど、保険が利いても100万クラスの金が必要。
おまけに全身麻酔で頭ぱっくり切る外科手術も必要らしい。当然入院。
トンカチでホネをばきばき割って、ノコギリで頭蓋骨ギコギコ切るとか。もうそれ大工の仕事ちゃうんか。
グロ話に弱く、保健体育の授業で気が遠くなって保健室に運ばれた俺としては、
もうこの時点で既に半分幽体離脱完成してた。
2つ目は、ちょっと改善に向かうと良いなぁというヌルい方法。
マウスピースのようなものを口に入れ、夜寝ている間これを装着。
そーする事で、俺の人生のように道を誤ったアゴ君に正しい道を教え、
「俺は人と同じ生き方なんかできねぇ。サラリーマンにはなりたかねぇ。夜の校舎窓ガラス壊して回った」
とかいうアゴの野郎を
「ええっ?俺もそこに行っていいのかよ?..社会の歯車も悪くねーかも」
と改心させるスプリンターとか言う器具を使う方法。
これで改善されることもある、かも?という程度の物だ。
が、さすがに俺の顔で工事されたらたまらんわーと言うことで、
2を選んだ。
つづき。